Selenia Dimensions × 独立行政法人国立病院機構 高崎総合医療センター
乳がん死ゼロをめざして感度の高いトモシンセシスを検診に適用し,見落としを防ぐ ─トモシンセシスが持つ三次元的情報から病変の位置を把握し,生検や手術のガイドに活用

2013-12-1

日立製作所

マンモグラフィ

トモシンセシス


左から鯉淵部長,高梨 世(せい)技師,生天目技師,乳腺・内分泌外科・小田原宏樹医師,同・常田祐子医師

左から鯉淵部長,高梨 世(せい)技師,
生天目技師,乳腺・内分泌外科・小田原宏樹医師,
同・常田祐子医師

高崎総合医療センターでは,2011年4月に臨床機国内第1号となる日立メディコ社のトモシンセシス対応デジタル式乳房X線診断装置「Selenia Dimensions」(HOLOGIC社製)を導入した。同院ではそれまで,CR装置でフィルム運用を行っていたため,Selenia Dimensionsの導入は,検査・読影環境に大きな変化をもたらした。さらに,Selenia Dimensionsの特徴であるトモシンセシスを住民検診に適用する先駆的な取り組みを行い,効果を上げている。同院における乳がん診療の実際や,トモシンセシス適用検診の臨床研究について,乳腺・内分泌科の鯉淵幸生第二外科系診療部長と,診療放射線技師の生天目美紀(なまためみのり)技師に取材した。

■高機能な次世代装置としてSelenia Dimensionsを選定

鯉淵 幸生 第二外科系診療部長

鯉淵 幸生
第二外科系診療部長

高崎総合医療センターは,2009年10月に新病棟を建て替え,現名称に改称した。2012年にはチーム医療の充実を目的に,消化器病,乳腺甲状腺,放射線治療,画像診断のセンター化を図り,2013年9月には県内初となるドクターカーを高崎・安中医療圏で運用開始するなど,社会や地域のニーズをとらえた運営が行われてきた。
市の乳がん検診から精査,治療まで,乳腺診療をトータルに担う乳腺・内分泌外科は,2011年に外科から独立。その際,超音波診断装置や,それまでCRでフィルム運用を行っていたマンモグラフィ装置を整備することになった。マンモグラフィ装置は,フィルムレス運用とするためにFPD搭載のデジタルマンモグラフィに更新することとなり,なかでも高機能な次世代装置の導入に向けて検討を行ったと,乳腺・内分泌外科の鯉淵幸生部長は当時を振り返る。
「それまでの経験から,日立メディコ社のSeleniaの画質が優れていると感じていましたが,タイミング良く新しい機種が発売されるとの話を聞きました」
「Selenia」の次世代機となるFPD搭載デジタルマンモグラフィ「Selenia Dimensions」は,2010年10月に日本国内の薬事承認を取得。同時期に,入札を経て, Selenia Dimensionsが導入されることが決定した。Selenia Dimensionsの最大の特徴は,±7.5°の範囲を15回照射して断層像を取得し,3D画像を再構成するトモシンセシスである。断層像をスクロールして観察することで,乳腺組織の重なりにより2D画像では観察が難しい関心領域を,明瞭に確認することができる。
トモシンセシス画像の第一印象について,鯉淵部長は,「2Dでは見えなかったものが見えることに,非常に驚きました。それまでも,マンモグラフィで見えない乳がんが造影MRIで見えることはよくあったのですが,トモシンセシスによりMRIやCTがいらなくなるのではないかと思ったほどです」と,そのインパクトの大きさを語る。

生天目美紀 技師

生天目美紀 技師

また,マンモグラフィの撮影を担当する生天目美紀技師も,トモシンセシス画像の感想を次のように話す。
「最初に見たときはとても感動しました。断層像をスクロールすると,乳腺の間に隠れたスピキュラや石灰化にピントが合ってはっきり見えるスライスが出てきますし,スピキュラは,引き込みがどの方向にあるかまで明瞭に見えます」
初めてトモシンセシス画像に遭遇した時の衝撃は,乳腺疾患にかかわる医師や技師ならば,誰でも感じることだろうと鯉淵部長は述べる。

■検診へのトモシンセシスの適用で乳がん発見率が倍増

同院では以前から,高崎市から委託された乳がん検診を実施し,地域医療に貢献してきた。2011年4月,Selenia Dimensionsの国内1号機導入を機に,臨床研究として視触診,マンモグラフィの2D撮影に加え,トモシンセシスを適用する乳がん検診を開始した。基本的に検診全例を対象にしたもので,現在もこの運用を継続している。検診へのトモシンセシス適用を決めた理由について,鯉淵部長は次のように話す。
「われわれにとって,マンモグラフィは乳腺診療の入り口です。そこには,客観性があることと,病変をピックアップできる高い感度が必要です。その意味で,従来のマンモグラフィに比べて,Selenia Dimensionsのトモシンセシスはスクリーニングデバイスとして優れていると考えています」
検診では,受付にてトモシンセシス撮影の説明を行い,同意書を得ている。これまでに同意を得られなかったのは3例のみで,2011年は483人,2012年は380人がトモシンセシス撮影を含めた検査を行った。

Selenia Dimensions

Selenia Dimensions

高崎市の乳がん検診では,一次読影と二次読影を別の場所で行う方法を採用している。同院の場合,視触診と2Dで一次読影を行ったあと,2D画像を高崎市総合保健センターに送り,市の読影委員会による二次読影が行われる。その後,さらに院内で三次読影としてトモシンセシス画像を読影するという手厚い読影体制になっている。院内でのマンモグラフィ読影は,乳腺・内分泌外科の鯉淵部長を含めた3名の医師が担当しており,検診では二次読影までの結果が出た後にトモシンセシスを読影し,異常所見がある場合に要精検としている。
検診へのトモシンセシスの追加は,検診結果に非常に大きな影響をもたらした。鯉淵部長らは,第24回日本乳癌検診学会学術総会(2013年11月開催)において,臨床研究の中間報告を行っている。これまでにトモシンセシスを追加した検診の受診者863人のうち83人(9.6%),110乳房に対して精検が実施され,11人に乳がんが発見された。このうち,2Dでは偽陰性で,トモシンセシスにより発見された乳がんが5例あった。発見率は1.3%と,従来の視触診+2Dと比べて約2倍となった。
トモシンセシスにより発見できた症例のほとんどは,重なりを排除することで明らかになった小さな構築の乱れであったという。鯉淵部長は,従来の検診では見落とされてしまう病変を拾い上げられる高い感度は,乳腺診療の入り口であるマンモグラフィに必須であると高く評価している。同時に,「2Dでは見えなかった小さな境界明瞭な腫瘤も見えるため,どうしても要精検率は上がってしまいます。もちろん,そこには何もないわけではなく,小さな良性の病変があるわけですから,“良性の病変も見つかる”と考えれば有効です。ただ,“がんを見つける”という検診の目的から考えれば,拾い上げる必要のない病変を拾うことになりますので,評価は難しいところです」と課題もあると述べる。
一方で,トモシンセシスにより,2Dで要精検とされていた症例の精検が不要となるケースも多く,局所的非対称性陰影(FAD)所見で要精検となった症例の約40%が,トモシンセシスにより乳腺の重なりであることが判明し,精検を回避できたという。
鯉淵部長は,「われわれがこれまで,トモシンセシスにより見つけてきた小さな構築の乱れの多くは浸潤癌でした。従来の検診で多く見つかってきた非浸潤癌と比べ,浸潤癌はより早期の発見,治療が非常に重要ですので,トモシンセシスが持つ小さな浸潤癌を見つける能力は,検診においてきわめて有用であると考えます」と,検診にトモシンセシスを用いる意義を強調する。

■デジタル運用で大きく改善した検査スループット

同院には26名の診療放射線技師が在籍し,マンモグラフィの検査は4名の女性技師が主に担当している。検査は,検診と診療を合わせて1日あたり約20件,1か月平均で400件を実施している。
検査を担当する生天目技師は,入職後の約1年間は以前のCR装置で検査を行っていた。フィルム運用からデジタル運用への大きな変革を経験した生天目技師は,マンモグラフィ検査の変化について,次のように話す。
「検査件数はあまり変わっていませんが,検査のスループットは非常に良くなりました。以前のCRでは,撮影後の読み取りから画像表示,確認まで時間がかかり,1検査あたり10〜15分を要していました。Selenia Dimensionsでは,撮影後すぐにコンソールのモニタに画像が表示されて確認できるため,5分程度で検査が終わります」
また,生天目技師は,Selenia Dimensionsは以前の装置と比べ,パネルが一回り大きくなっているものの,撮影時には圧迫パドルが自動的にシフトするため,操作性に問題はないと述べる。数種類の圧迫パドルから受診者に合ったパドルを選択できるため,以前であればパドルが合わずに何度も圧迫する必要があった受診者も適切に圧迫でき,受診者と検査者の負担を軽減できている。Selenia Dimensionsを導入してから2年半が経過し,検診を同装置で2回以上受診するケースも増えていることから,ポジショニングにおいては過去画像をRISで参照して,最適な検査をめざしていると生天目技師は話す。
Selenia Dimensionsは,コンベンショナル(2D),トモシンセシス(3D)の撮影モードに加え,1回の圧迫で2D+3D撮影が可能なコンボモードを備えている。同院では,検診だけでなく,診療においても基本的にトモシンセシス撮影を追加しているため,検査オーダの多くはコンボ撮影となる。トモシンセシス撮影の追加により撮影時間が約4秒延長することについて,生天目技師は,「圧迫時間の延長が受診者の負担になることを心配しましたが,検診受診者を対象に行ったアンケートでは,痛みや撮影時間に関する所感は,2D撮影のみと比べても変わりないとの結果になりました」と述べる。
また,タッチスクリーンパネルを採用したコンソールの操作性については,オーダと異なる順番で左右を撮影した場合でも,撮影後に編集できることや,プレビューモニタで左右を並べて表示できるため,対称性の確認が容易であるといった使い勝手の良さを評価する。
Selenia Dimensionsで撮影された画像データは,診察室に2台,検査室に1台設置された専用ビューワ「SecurView」に,2Dと3Dの全データが自動で転送されると同時に,PACSに2Dデータが転送される。オンタイムでデータが転送されることにより,診療では患者が検査後に診察室に戻る間に担当医が画像を確認でき,患者を待たせることなく,スムーズな診察が可能となっている。

左右を同時に表示し,対称性を確認しやすいプレビューモニタ(ファントム撮影)

左右を同時に表示し,対称性を確認しやすい
プレビューモニタ(ファントム撮影)

コンソール画面にはわかりやすいアイコンでボタンが表示される。

コンソール画面にはわかりやすいアイコンで
ボタンが表示される。

 

圧迫パドルは数種類から受診者に合わせて選択

圧迫パドルは数種類から受診者に合わせて選択

 

圧迫パドルは自動でシフトし,ポジショニングを支援

圧迫パドルは自動でシフトし,ポジショニングを支援

 

■3Dで病変位置を立体的に把握し生検や手術に活用

検診にトモシンセシスを用いる有用性を認識していた鯉淵部長は,当初より従来のマンモグラフィ読影とはまったく異なる読影方法を実践している。トモシンセシス読影でどこに注目すべきかを2Dで事前に確認するという,トモシンセシスをメインとした読影スタイルだ。そのため,導入直後は2D画像のコントラストが強く出るように設定し,白く光って見える部分をトモシンセシスで重点的に観察していた。しかし,この2D画像は,外部での二次読影の際に,コントラストが強すぎて適さなかったため,現在は従来のフィルムに合わせた画質に調整し直している。
同院では,Selenia Dimensionsの導入により,フィルムからトモシンセシスへと一足飛びに読影環境が変わったことになる。鯉淵部長は前職でモニタ診断も経験しているが,トモシンセシス画像の大きな特徴は,石灰化の見え方にあると話す。トモシンセシスの断層像では,淡いびまん性のものも含め,石灰化が強調されて見えるため,検診時の石灰化の診断については,2Dに戻ってカテゴリー分類をする必要があると指摘する。
一方,診療においては,石灰化をトモシンセシスで観察する意義は大きいと話す。
「従来のマンモグラフィでは,CCとMLOの2方向の画像から石灰化の位置をイメージします。しかし,トモシンセシスでは,画面にスライドバーとスライス番号が表示されるため,外側から,あるいは上から何cmと,石灰化の位置を明確に頭の中で3D構成できます。そのため,マンモトームでの採取の可否判断や穿刺経路の検討を容易に行えます。また,術前に留置したクリップと石灰化の位置関係がトモシンセシスでは明瞭になるため,手術時には切除範囲を決めるガイドとしても有用です」
トモシンセシスの有用性は,ほかにも多く挙げられる。検診では,他院でFADとしてピックアップされ,同院で精査を行うと,トモシンセシスではまったく異常が見られないことも多くある。従来,同院では,FADに対しては必ず超音波検査を行っていたが,トモシンセシスで異常がないことが明確になることで,超音波検査を省略するケースもあるという。また,鯉淵部長は,超音波検査をする際には,トモシンセシスによりどこをチェックすべきかわかるため,医師が超音波検査を行う同院のような体制では,診療時間の短縮につながり,有用性が高いと述べる。鯉淵部長は,トモシンセシスを超音波装置と比較することはできないが,従来のマンモグラフィと比べれば,確実にトモシンセシスの方が優れていると断言する。ほかにも,Selenia Dimensionsの導入は,拡大スポット撮影や診断MRIが不要(広がり診断にはMRIを実施)になるなど,受診者の負担軽減に加え,過密なMRI検査を避け,造影剤リスクを回避するといった点からも大きなメリットをもたらしている。

診察室ではSecurViewでトモシンセシス画像を用いて説明することで,患者の理解が深まる。

診察室ではSecurViewでトモシンセシス画像を用いて説明することで,患者の理解が深まる。

画面にはスライドバーとスライス番号が表示されるため,病変の位置を容易に把握できる。

画面にはスライドバーとスライス番号が表示されるため,病変の位置を容易に把握できる。

 

■症例1:70歳代,女性,検診発見例

症例1:70歳代,女性,検診発見例

2D画像(左)では,小さな病変で境界の判定不能(C-3)。トモシンセシス画像(右)では,辺縁のスピキュラが認識可能で,C-4,5となる。

 

■症例2:50歳代,女性,検診発見例

症例2:50歳代,女性,検診発見例

2D画像(左)では,病変の認識はできない。トモシンセシス画像(右)では,構築の乱れ,スピキュラが認識可能である(C-4)。

 

■乳がん死ゼロの実現に向けてトモシンセシスが果たす役割

高崎市の乳がん検診は,40歳代はCC,MLOの2方向,50歳以上はMLO1方向の撮影を行うプログラムとなっており,同院での検診はトモシンセシスも同様に撮影している。要精検となった場合には,必ずCC撮影を追加するが,鯉淵部長は,「もともと,構築の乱れはCCの方が見やすいですし,斜め方向の撮影であるMLOに対して,CCの方が位置情報を把握しやすく,3D情報として有用です。ただし,CCはブライドエリアがMLOよりも大きくなるため,どちらの画像もある方が確実な診療につながります」と,2方向撮影の重要性を強調する。
また,検診として定期的に検査を受ける受診者の被ばく低減にも努めており,そのひとつとして,乳房の圧迫を従来と同様に行っている。3Dで観察可能なトモシンセシスであれば,圧迫を弱くしても問題がないと思われがちだが,線量低減のためにはきちんと圧迫することが重要であると,鯉淵部長は指摘する。
「乳がんで亡くなる人を,世の中からなくしたい」との思いを胸に,日々診療にあたる鯉淵部長は,その実現のためにはSelenia Dimensionsのトモシンセシスが大きな役割を果たすと明言する。今後は,要精検率の上昇といった課題を解消するために,石灰化のカテゴリー分類や,検診ではピックアップが不要な小さな良性病変への対応などの検討を行い,同院で積み重ねられた経験を広く発信していきたいと述べる。
また,鯉淵部長は,「大胆な見解かもしれませんが,“すべての構築の乱れはスピキュラである”と言えると思います。スピキュラとは,クーパー靱帯の引き込みですが,従来のマンモグラフィではこれが見えないために,構築の乱れとされていました。しかし,トモシンセシスで重なりを排除すると,クーパー靱帯の引き込みが明瞭になり,どこかに必ずスピキュラが見つかります」と述べる。ほかにも,トモシンセシスの観察により,乳腺濃度が濃い部分には血管が関与していることもわかってきており,トモシンセシスの読影結果を2D読影にフィードバックすることで,2Dの読影能力向上にもつながっているという。
鯉淵部長は,トモシンセシスの検診への追加を,これからも信念を持って続けていくと語る。同院から発信されるエビデンスをもとに,多くの医療機関でトモシンセシスが有効に活用され,乳がん死ゼロの実現に寄与することが期待される。

(2013年10月9日取材)

 

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