DigitalDiagnost × 福井大学医学部附属病院
デジタルX線の高い画像処理技術をベースとして胸部X線撮影のさらなる精度向上に取り組む ─ワイヤレスポータブルディテクタの搭載と画像処理技術UNIQUEで胸部画像診断に貢献

2012-10-1

フィリップスエレクトロニクスジャパン

X線装置


一般撮影室に3台のデジタルX線撮影装置DigitalDiagnostを導入。 左から木戸屋栄次副技師長,安達登志樹技師長,長谷川喜也主任

一般撮影室に3台のデジタルX線撮影装置DigitalDiagnostを導入。
左から木戸屋栄次副技師長,安達登志樹技師長,長谷川喜也主任

福井大学医学部附属病院は,日本の呼吸器画像診断学の第一人者である伊藤春海名誉教授/特任教授の指導のもと,胸部X線画像の撮影技術や画質の向上に取り組み,精度の高い胸部画像の提供で高い評価を受けている。同院では,2012年3月に胸腹部を中心にした一般撮影室に,フィリップスエレクトロニクスジャパンのFPD搭載デジタルX線撮影装置「DigitalDiagnost 」を導入した。可搬型の「ワイヤレスポータブルディテクタ(WPD)」を搭載したDigitalDiagnostの運用について,放射線部の安達登志樹技師長,木戸屋栄次副技師長,長谷川喜也主任に取材した。

■病院としてISO9001の認証を取得し質の高い診療を行う

福井大学医学部附属病院の放射線部は,診療放射線技師29名,看護師は内視鏡部門とあわせて19名,事務5名の体制となっている。モダリティは,一般撮影装置5台,X線TV5台,CT2台(64列),MRI3台(3T×2台,1.5T),血管撮影装置3台,放射線治療装置2台などが装備されている。放射線部の安達登志樹技師長は,運用のポリシーを次のように語る。
「医療ミスは,コミュニケーション不足から発生します。医療安全の観点からも,技師同士はもちろん,医師,看護師,事務,そして患者さんとのコミュニケーションを大切にして,スムーズで安全な検査を行うことを心掛けています」
同院は,2003年に大学病院としては2番目に,品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001を取得した。医療機関におけるISO9001は,質の高い医療の提供を実現するための“管理運営の仕組み”が国際標準レベルにあることを認証するもので,安全や患者サービス提供のための改善に継続的に取り組むことが求められる。安達技師長は放射線部での画像診断機器の導入に関して,「大学病院としての質の高い検査と医療安全を達成できることを条件にして,機種の選定,更新を行っています」と説明する。

■精度の高い検査と患者サービス向上をめざし一般撮影室を全面リニューアル

安達技師長は2010年に同院に赴任したが,最初に手掛けたのが一般撮影室の機器の見直しだった。その経緯について,「2000年以降,一般撮影関係の機器は更新されておらず,ISO9001の品質管理の観点からも,病院側に更新の必要性について理解していただき,2年間で一般撮影室5部屋すべてのリニューアルを実現させました」と説明する。
同院では,先行リニューアルした口腔外科や小児など特殊な撮影を行う2部屋に続いて,2012年3月に一般撮影室3室に,ワイヤレスFPDを搭載したDigitalDiagnostが導入された。その時にコンセプトとしたのが,今まで胸腹部,救急,整形領域と用途別に違う構成になっていた3つの部屋を,すべて同じシステムで統一することだった。
安達技師長は,「曜日や時間帯によって患者さんが集中しても,画像の違いや検査の連続性などから別の部屋で検査ができないため,待ち時間が発生していました。これを解消するために,3部屋は同じシステムにして効率の良い検査が行える体制をめざしました」と語っている。

立位,臥位とワイヤレスポータブルディテクタ

立位,臥位とワイヤレスポータブルディテクタ

管球の可動範囲が1600mmに広がり,下肢撮影にも対応

管球の可動範囲が1600mmに広がり,下肢撮影にも対応

   
WPDを使った前腕骨撮影

WPDを使った前腕骨撮影

天井走行式X線管支持装置にはディスプレイが搭載され,さまざまな操作が可能

天井走行式X線管支持装置にはディスプレイが搭載され,さまざまな操作が可能

WPDの充電を兼ねたドッキングステーション

WPDの充電を兼ねたドッキングステーション

 

■全衛連の施設認定をクリアする画質を基準として機種を選定

同院の一般撮影の年間検査件数は,5万4260件,1日平均で約150人にのぼり,内訳は呼吸器疾患など胸腹部領域が5割,整形領域3割,歯科口腔外科とマンモグラフィが各1割となっている。3部屋に設置される一般撮影装置の選定では,精度の高い胸部X線撮影が行えることが最初の判断基準になったと,安達技師長は説明する。
「当院には,放射線科の前教授で呼吸器画像診断の権威として知られる伊藤春海名誉教授が在籍されており,非常に多くの胸部X線撮影を行っています。まず,この胸部疾患をしっかりと評価できる装置が前提となりました。導入にあたっては,われわれだけでなく伊藤名誉教授にも各社の画像を評価いただき,臨床の立場から画像評価のポイントをアドバイスしていただきました」
導入時の画質評価の指標となったのが,全国労働衛生団体連合会(全衛連)が行っている健診施設の精度管理基準である。全衛連の総合精度管理事業では,健診の精度管理として"労働衛生検査","臨床検査","胸部X線検査"について,毎年,実施施設の評価を行い,結果を公表している。同院では,胸部X線検査で7年連続してA判定を受けてきた。木戸屋栄次副技師長は,「審査委員会の委員長を伊藤名誉教授が務められており,全衛連の施設基準を指標として装置の基本性能をチェックしました」と言う。
さらに,もうひとつの選定基準として,X線の発生器から検出器まで一体型のシステムとなっていることを安達技師長は挙げる。
「さらに高いレベルの胸部撮影のためには,FPDの性能だけでなく,管球の特性やグリッドの特性など,画質に及ぼす影響をシステム全体でとらえることが必要です。今後の研究や教育なども考慮し,デジタルX線についてトータルでコントロールできる一体型のシステムを条件としました。実際に胸部を中心に各社の画像を比較検討し,DigitalDiagnostの導入を決定しました」

安達登志樹 技師長

安達登志樹 技師長

木戸屋栄次 副技師長

木戸屋栄次 副技師長

長谷川喜也 主任

長谷川喜也 主任

 

■高いDQEによって画質の向上と被ばくの低減に取り組む

同院に導入されたDigitalDiagnostは,第三世代の新しい製品であり,フィリップスのFPDである「ワイヤレスポータブルディテクタ(WPD)」を最大限に生かす“ワイヤレストレイ”や“ディテクタシェアリング”などの機能を搭載しているほか,デザインもリニューアルされている。DigitalDiagnostでは,X線検査室に求められるニーズに合わせて5つの構成(High Performance/Flex/Value/Emergency/Chest)を用意しているが,同院では3部屋とも,立位と臥位に据置型のFPDをインストールし,WPDを組み合わせた「High Performance Room」で構成している。
DigitalDiagnostには,フィリップスがCRの時代から培ってきたマルチ周波数処理技術である“UNIQUE(UNified Image QUality Enhancement)”が搭載されている。2012年3月の導入からの初期の運用について安達技師長は,「まずは以前の画質の担保が求められますが,物理特性や画像処理などの条件を検討し,一定のレベルはクリアできていると思います。今後は,今年度の全衛連の施設認定をめざし,胸部X線写真の画質向上に向けて検討を進めていきます。伊藤名誉教授からは,肺野だけでなく,胸椎などの低濃度部や肋骨骨梁の描出を厳しく求められていますので,そこに向けて,DigitalDiagnostの画像をさらに磨き上げているところです」と語る。
同院では,DigitalDiagnostの導入で撮影条件を見直し,すべての撮影領域で照射線量を半分程度に設定した。安達技師長は,「DigitalDiagnostはDQE(検出効率)が高いので,被ばくの低減についてもさらに検討していきます。FPDはダイナミックレンジが広く,CRに比べてより多くの情報を持っていますので,胸部写真として適正な画質に近づけるように調整することが今後の研究課題です。管球を含めたシステム一体型のDigitalDiagnostの利点を生かして,最適な撮影条件を探っていきます」と述べた。

●DigitalDiagnostによる臨床画像

DigitalDiagnostによる臨床画像

 

■WPDを最大限に生かすDigitalDiagnostの使い勝手

●ワークフローの向上

DigitalDiagnostでは,X線管球の支持装置と連動したさまざまな機能によって,検査のワークフローが向上している。安達技師長は一体型のシステムのメリットについて,「以前の装置は2管球の構成で,狭い部屋の中では医療安全の面からも心配がありましたが,DigitalDiagnostではX線管との連動によって操作性も向上し,検査室のレイアウトもすっきりしました」と評価する。この点について,一般撮影を担当する長谷川喜也主任も,「動線が非常に改善されました。X線支持装置のボタンで,検査室内の3つのディテクタを切り替えることができます。以前は,立位,臥位の切り替えにはいったん操作室に出る必要がありましたが,DigitalDiagnostでは入室された患者さんの状態を確認してその場で切り替えることができ,効率的な検査につながっています」と述べている。

●ワイヤレスFPD(WPD)

DigitalDiagnostのWPDは,半切サイズで144μmの画素サイズを持っている。画像は撮影後約5秒で表示され,1回の充電で最大200画像の撮影が可能となっている。木戸屋副技師長は,WPDを使った検査のメリットを次のように語る。
「WPDでは,CR撮影のような読み取りの必要がなく,連続撮影ができることで検査の効率が大きく向上しました。整形外科領域の四肢の骨折の評価では,そのままの姿勢で角度を変えた撮影が連続して行えます。CRでは撮影ごとにカセッテを抜き取る必要があり,骨折している患者さんにも負担をかけていました。また,小児やベッドから動かせない重症患者の撮影でも,パネルを動かさずに画像を確認できるのは大きなメリットです。整形外科医や救急の担当医からの評価は高いですね」

●Eleva Workspot

DigitalDiagnostの操作を行うEleva Workspotはタッチスクリーンを採用し,撮影前の条件の設定,画像表示,画像処理などを統合したコンソールになっている。木戸屋副技師長は,「X線発生器のコントロールと画像処理が1つのコンソールに一体化されたことで,シンプルに操作できます。当院では,撮影前にはRISで検査内容や部位を確認し,PACSで過去画像を参照して検査を行っています。多くのモニタが並びますので,ワンコンソールになったことで操作室の検査環境が向上しました」と評価する。また,使用頻度の高い管電流,管電圧の変更はハードウエアボタンになっており,操作者の使い勝手に配慮している。長谷川主任は,「患者さんの体型に合わせて微調整しますが,押すことで感覚的にわかるので使いやすいですね」と言う。

ワンコンソールで発生器から画像処理までに対応するEleva Workspot

ワンコンソールで発生器から画像処理までに対応するEleva Workspot

タッチスクリーンを採用して直感でわかりやすい操作感を提供

タッチスクリーンを採用して直感でわかりやすい操作感を提供

 

■EI値を取り入れ画質と被ばく線量の最適化に向けた検討を行う

同院では 今後の研究課題のひとつとして,IEC(International Electrotechnical Commission:国際電気標準会議)がデジタルX線装置のメーカー間の感度を比較するための指標として提唱したExposure Index(EI値)に基づいた線量の適正化を進めていく予定だ。DigitalDiagnostはEI値に対応しているが,各領域での適正線量の基準作りは始まったばかりで,今後の検討課題になっている。安達技師長は,「画質を損なわずにどこまで線量を下げられるかが課題で,胸部領域での線量の適正化について,EI値を取り入れた研究を進めていきたいと考えています」と述べている。
さらに安達技師長は,“VarioFocus”を使った検討を研究テーマとして挙げる。VarioFocusは,X線管に搭載された2つの焦点(0.6と1.2mm)を使って,中間サイズの焦点を電気的に作り出すフィリップス独自の技術で,これによって撮影部位に応じて最適な焦点サイズによる検査が可能になり,管球のライフタイムの向上,照射時間の短縮なども期待できる。安達技師長は,「例えば,胸部でも心臓の大きさを見たいという時には,肺野ほどの鮮鋭度は必要ありません。固定の焦点ではなく焦点サイズを可変することで,部位や検査目的に合わせた焦点サイズを選択して検査が行えます。被ばくの低減や管球への負荷低減なども期待できますので,今後も研究を進めていきたいと考えています」と述べている。

■胸部画像撮影のさらなる“カイゼン”に向けて研究を継続

DigitalDiagnostの導入によって,一般撮影での本格的なWPDによる運用が始まった同院だが,フルデジタル環境での撮影の注意点について,安達技師長は次のように言う。
「デジタル画像は,後からデータを操作して自由に調整が可能ですが,それによって画像にアーチファクトが生じる可能性があることには注意が必要です。また,デジタル画像でも体格や部位に合わせた適正な条件での撮影を心掛けるという基本は変わりませんが,過少線量は画像に表れますが,線量オーバーは補正されてしまうため,線量が上がる傾向にあります。特に,これからデジタル画像しか知らない世代になっていきますので,EI値なども取り入れて,適正な撮影条件のあり方について検討していきたいと考えています」
DigitalDiagnostによる“福井大学基準”の胸部画像撮影への取り組みはまだ始まったばかりである。安達技師長は今後について,「まずは,DigitalDiagnostでの全衛連の施設認定の取得に向けて画質の検証を進めていきます。これは,とりもなおさず,ISO9001の品質保証の精神でもあります。画質の向上のためには,常に改善のための研究を継続していくことが重要です。DigitalDiagnostは,そういった研究を進めていくための大きな力になると考えていますので,呼吸器疾患の診断に貢献できる質の高い胸部画像撮影のためのチャレンジを続けていきます」と抱負を述べている。

(2012年7月25日取材)

福井大学医学部附属病院

住所:〒910-1193
福井県吉田郡永平寺町松岡下合月23-3
TEL:0776-61-3111
病床数:600床
http://www.hosp.u-fukui.ac.jp/

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