AZE VirtualPlace 雷神 Cluster × 医療法人 寿会 富永病院
ネットワーク型ワークステーションによる迅速な3D画像処理で急性期脳卒中や難治症例の治療・手術に有用な情報を提供ー複数のクライアントで並列処理を行うことにより診断から治療・手術までの時間を大幅に短縮

2012-3-1

AZE

ワークステーション


CT室にあるクライアントで画像処理を行う松本部長。ネットワーク型WSはマンパワーの有効活用にもつながると評価する。

CT室にあるクライアントで画像処理を行う松本部長。
ネットワーク型WSはマンパワーの有効活用にも
つながると評価する。

1970年に開院した医療法人寿会富永病院 は,大阪市の中心部である難波地区で,脳卒中などの急性期疾患や脳動静脈奇形(AVM)などの難治症例の手術を数多く行ってきた実績を持つ。同院では,2003年にAZE社の医用画像ワークステーション(以下,WS)を採用し,3D画像を診断や治療・手術に活用してきたが,2009年のArea Detector CT導入に伴い,ネットワーク型の「AZE VirtualPlace 雷神 Cluster(以下,雷神 Cluster)」に更新。放射線部を中心に院内各所で3D画像を作成・参照できる環境を構築した。同院放射線部では,治療・手術のための迅速な情報提供が求められる中で,ネットワーク型のメリットを生かした3D画像作成を行っている。

■急性期脳卒中や難治症例など豊富な手術実績を誇る

富永病院は,大阪市の中心地である難波にある病床数306床の民間病院である。脳神経外科のスペシャリストとして,新聞やテレビなどマスコミにも数多く取り上げられている富永紳介理事長が1970年に開院。「Less mortality, less morbidity − 一人でも多く救命し,一人でも多く後遺症なく社会復帰させること」「患者さん優先の開かれた病院として,安全で質の高い医療を提供し,地域社会に貢献する」を理念に掲げ,急性期医療を提供している。
同院の特色は,何と言っても手術件数の多さである。なかでも,脳神経外科の手術件数には目をみはるものがあり,全国でもトップクラスの実績を誇る。特に脳腫瘍や脳動脈瘤,AVMの手術件数が多く,難治症例も積極的に受け入れており,全国から患者さんが訪れている。病院のホームページ でも手術件数や予定を公開しているほか,院内では患者家族や他施設の医師などに手術のライブ映像を公開しており,豊富な実績に裏打ちされた自信のほどがうかがえる。
同院の手術件数の多さを支えているのが,画像検査を担う放射線部である。同院では,診断や治療・手術を迅速に行うために,ハイエンドのモダリティを積極的に導入することにしており,装置の更新時には,常にその時点での最新機種を採用してきた。現在,モダリティはCTが2台,MRIが3台,血管撮影装置が2台設置されている。CTは4スライスCT1台と,2009年1月に東芝社製Area Detector CT「Aquilion ONE」を導入したほか,MRIはすべて1.5T装置,血管撮影装置は頭部専用と心臓専用をラインナップしている。また,同院では検査画像のフィルムレス化を図っており,PACSによる院内への画像配信を行っている。
このような高性能なモダリティを多数導入している中で,速やかな診断から治療・手術までを行うために重要な役目を果たす医用画像WSについても,同院では常に最新の製品を求めてきた。2009年には,Area Detector CTの稼働に伴い,AZE社のネットワーク型WSである雷神 Clusterを導入。ネットワーク型WSの利点を生かし,大量のボリュームデータを高速に処理している。

■迅速な診断,治療・手術のために並列処理が可能なネットワーク型WSを導入

富永病院がAZE社のWSを最初に導入したのは,2003年7月。当時としてはハイエンドであった16スライスCTの導入に併せて採用した。放射線部の松本孝義部長は,「選定に際しては,複数の製品が候補に挙がりましたが,機能や性能に優れていて,かつ価格も納得できるものだったことから,AZE社の製品を採用することに決めました」と述べており,性能とコストのバランスが高次元でとれていた医用画像WSであったことが,最大の理由であったとしている。
そして,実際に使用し始めて,操作性が非常に優れている点がスタッフから評価された。特に同院は,急性期脳卒中などの救急患者が夜間・休日などに搬送され,緊急検査が行われることが多い。その際に,当直の診療放射線技師が3D画像を作成するためには,操作の習得が容易であることが大事である。放射線部には,現在20名の診療放射線技師が在籍し,ローテーションで業務を担当しているが,その誰もがAZE社のWSの操作に習熟している。
その後,モダリティの更新に伴い,他社のWSも導入して,3D画像作成のための環境が充実していったが,長年の使用経験があったこともあり,スタッフのAZE社製品に対する評価は高まっていった。こうした状況の中,2009年1月にArea Detector CTの導入を機に,WSをネットワーク型へ移行することになった。松本部長は,次のように述べる。
「かねてより,ネットワーク型のWSが必要だと感じていました。当院の場合,通常,検査は予約で行っていますが,急性期脳卒中などの緊急検査も数多くあります。例えば,頭部のCT検査では,骨付き画像,サブトラクション画像,石灰化の抽出という3種類の処理をしますが,それぞれの画像処理に20分かかるとすると,WSが1台しかなければ60分も要することになります。これでは診断をつけて治療・手術を開始するまでに時間がかかりすぎてしまいます。しかし,ネットワーク型のWSならば,1つの検査データを3台のクライアントで並列処理できるので,20分で3種類の3D画像を提供することが可能になります。この時間の差は,患者さんの予後にも影響してきます。特にAZE社のWSは使い勝手が良いので,迅速に画像を提供したいわれわれにとっては最適な製品でした」
放射線部ではネットワーク型WSである雷神 Clusterを導入することで,速やかな3D画像作成によって診断から治療・手術までの時間短縮に取り組んでいる。

CT室のクライアントを操作する原田副主任は,マルチボリュームでの重ね合わせの精度が高いと述べる。

CT室のクライアントを操作する原田副主任は,マルチボリュームでの重ね合わせの精度が高いと述べる。

東芝社製Area Detector CT「Aquilion ONE」のコンソールにもクライアントを設置

東芝社製Area Detector CT「Aquilion ONE」のコンソールにもクライアントを設置

 

■CT室はじめ,各装置室にあるクライアントから高速に3D画像処理

富永病院の放射線部では,毎月CT約1500件,MRI約3000件の検査を行っている。このうち予約枠外の緊急検査は10~20%を占めている。
急性期脳卒中では,診療科の医師からまずCT検査のオーダが出され,出血か梗塞かの鑑別が行われる。出血があった場合,そのまま3D-CTで血管の検索をする。この段階で雷神 Clusterのクライアントを用いてVR像を作成し,さらにケースによっては出血範囲をわかりやすくするために血管を色分けする。医師はこの画像を見て,インターベンションか開頭手術を行うかの判断をする。もし3D-CTで診断がつかないときは,血管撮影検査を追加する。一方,脳梗塞の場合は,CT検査後にMRIで,MRAとDWIを撮像し,梗塞巣を特定してから,血管撮影室でインターベンションを施行する。
このような検査から診断,治療・手術に至る流れの中で作成された3D画像は,雷神 ClusterだけでなくPACSサーバにも保存され,院内各所のオーダリングシステム端末からも参照できる。現在,雷神 Clusterは1台のデータベースサーバと2台のアプリケーションサーバがあり,クライアントは1階のCT室に4台,2階のMRI室に2台(1台は「AZE VirtualPlace Lexus」をクライアントとしても使用できるようにしている),5階の血管撮影室に1台設置されているほか,一部の診察室や医局,面会控え室などにあるオーダリングシステム端末もクライアントとなっており,必要な時にすぐに3D画像を参照できるようになっている。
5階にある血管撮影室のクライアント。繁忙時には,このクライアントでCTの画像処理を行うことで業務の効率化を図っている。    
頭部用の血管撮影装置(東芝社製)。雷神 Clusterのクライアントで作成した画像はPACSにも保存され,手技中に6面モニタの1つに表示させる。    
循環器用の血管撮影装置(シーメンス社製)。循環器科医は,5階にあるクライアントを操作して画像を参照しながら,VR像の追加作成のオーダを出すこともある。

5階にある血管撮影室のクライアント。繁忙時には,このクライアントでCTの画像処理を行うことで業務の効率化を図っている。

5階にある血管撮影室のクライアント。繁忙時には,このクライアントでCTの画像処理を行うことで業務の効率化を図っている。

頭部用の血管撮影装置(東芝社製)。雷神 Clusterのクライアントで作成した画像はPACSにも保存され,手技中に6面モニタの1つに表示させる。

頭部用の血管撮影装置(東芝社製)。雷神 Clusterのクライアントで作成した画像はPACSにも保存され,手技中に6面モニタの1つに表示させる。

   
循環器用の血管撮影装置(シーメンス社製)。循環器科医は,5階にあるクライアントを操作して画像を参照しながら,VR像の追加作成のオーダを出すこともある。

循環器用の血管撮影装置(シーメンス社製)。循環器科医は,5階にあるクライアントを操作して画像を参照しながら,VR像の追加作成のオーダを出すこともある。

 

 

1.AVM症例の術前シミュレーションで高い評価

雷神 Clusterでは,頭頸部,循環器領域の検査のほとんどで,3D画像作成を行っている。特に脳神経の疾患を多く扱う同院だけに,頭頸部の3D画像を作成する頻度は高い。2003年からAZE社のWSを使いこなしてきた放射線部の原田基嗣副主任は,次のように説明する。
「頭頸部の検査では,VR像と骨を除去したサブトラクション画像に加え,石灰化を抽出した画像と血管のVR像とをマルチボリュームによって重ね合わせたフュージョン画像を作成しています。このフュージョン画像は,血管の狭窄率の正確な評価に有用です」
また,頭頸部領域では,術前のシミュレーションにも雷神 Clusterによる3D画像が用いられている。同院で数多くの手術症例があるAVMでは,術前にVR像を作成し,さらにnidus,feeder,drainerに色分けして,開頭手術時に直接吻合するfeederとdrainerの位置を事前に確認できるようにしている。松本部長は,「AVMは非常に珍しい症例であり,その手術を施行している施設も多くありません。富永理事長はAVM手術の第一人者であり,全国から患者さんを受け入れています。この血管の色分けが,手術前のシミュレーションに非常に有効であると理事長先生が評価しており,当院ではすべての症例で行うようにしています。このような画像処理は,当院独自のものではないでしょうか」と説明している。
このほかにもAVM症例では,血管撮影装置の撮影データとのフュージョン画像も作成している。原田副主任は,「画像を重ね合わせる際に数値を入力するだけで,正確な位置合わせができ,有用な情報を提供できます」と述べている。

2.マルチボリュームによる冠動脈の広範囲画像を作成

一方,循環器領域でも雷神 Clusterによる3D画像作成が,積極的に行われている。冠動脈バイパスグラフト術(CABG)症例の場合,Area Detector CTの撮影データから特徴的な3D画像を作成している。
これは,Area Detector CTで160mmの広範囲を位置をずらして2回撮影して,それぞれの解析を行った上で,マルチボリュームを用い,一般撮影装置での長尺撮影のようにつなぎ合わせて,320mm弱の長さのVR像をつくるというものである。「撮影データは異なるシリーズになるので,個別に解析を行いますが,それを高い精度でつなぎ合わせることができます」と原田副主任は説明する。
循環器領域での3D画像処理としては,このほかルーチンでの画像処理として,VR像,CPR像,ストレッチビューなどを作成している。これらの画像処理を複数のクライアントで並列処理することもあり,スピーディな情報提供につなげているいう。

3.医師と診療放射線技師との円滑なコミュニケーションツール

放射線部内にある雷神 Clusterのクライアントで作成された画像は,PACSに送信され,診断や術前のシミュレーション,患者説明に使われるほか,5階の血管撮影室にあるクライアント上で脳神経外科医や循環器科医が参照することもある。医師は,VR像などを画面上で展開したりしながら,1階のCT室にいる診療放射線技師に,プラークのCT値の測定を求めたり,角度を変更したVR像の作成など,追加オーダを出すことがあるという。
このように離れた場所にいる医師と診療放射線技師が,クライアント上で画像を確認し合いながら,リアルタイムで3D画像を作成できることは,ネットワーク型WSの大きなメリットだと言える。手技を行う医師の要望に応じて,すぐに求められている3D画像を作成できることは,脳卒中などの救急症例を多く扱う同院にとって心強いことである。原田副主任は,「医師からは,速やかにきれいな3D画像を確認でき,画像を信頼して手技を行えると言われています」と述べている。

4.人材の有効活用など業務効率化にもメリット

ネットワーク型WSは,放射線部門の業務マネジメントの観点からも,多くのメリットを生んでいる。Area Detector CTといったハイエンド装置で数多くの検査を行う施設では,大量のボリュームデータのスピーディな処理が課題となっているが,ネットワーク型WSがこの課題を解決する糸口になると,松本部長は言う。
「撮影はしたものの,その画像処理をするスタッフをCT室内で確保できないことがあります。その場合,例えば5階の血管撮影室にいるスタッフが,部屋を移動することなく,代わりに処理を行うことができます」
スタンドアロン型のWSに比べ,複数台のクライアントで画像処理を行えるネットワーク型WSは,多くの医療機関が抱えているマンパワーや医療資源不足を改善し,人材の有効活用や効率的な装置運用にも効果があると言える。
また,松本部長は,万が一クライアントに支障が生じた場合に,別のクライアントで作業できることも,ネットワーク型のメリットとして挙げている。同院のように一刻を争う症例を手がける病院にとって,これは大きな安心につながる。

■AVM症例の術前シミュレーション画像

AVM症例の術前シミュレーション画像

AVM症例では,血流の流れがわかりやすくなるように,各パートを分けて画像処理を行っている。

 

■ボルト留置後の頸部腫瘍画像

ボルト留置後の頸部腫瘍画像

ボルトを留置してあるため,血管とボルトはCT画像を使用し,腫瘍部はアーチファクトを避けるため,MR画像を使用して,マルチモダリティフュージョンを使って画像処理を行っている。

■左頭蓋窩髄膜腫症例の術前シミュレーション画像

左頭蓋窩髄膜腫症例の術前シミュレーション画像

脳幹部に近い腫瘍の術前シミュレーションでは,必ず位置関係を事前に把握しておく必要があるため,3Dで画像作成を行っている。

 

■CABG後の冠動脈解析処理画像

CABG後の冠動脈解析処理画像

CABG後の撮影を行う場合は,ノンヘリカルスキャンで2回に分けて撮影を行っている。被ばく低減のため,大動脈部の撮影範囲をできるかぎり狭く,回転数も減らして撮影しているが,画像結合部に微小なズレが生じてしまうため,AZEのVR + VRでズレを補正して,正確な冠動脈解析が行えるようになった。

 

■診療科と放射線部が協力しさらなるWSの機能を追究

雷神 Clusterにより,診断から治療・手術に求められる3D画像を迅速に提供できるようになった富永病院であるが,松本部長は,さらなるアプリケーションの使い勝手の向上を要望している。「当院は,難治症例などの豊富な手術実績が特色であるだけに,単なる術前シミュレーションにとどまらず,より手術に近い体験ができるように,いままで以上の3D画像の精度向上を望んでいます」と,今後のAZE社の技術開発に期待を寄せている。
一方,院内でさらにWSを活用していくためにも,原田副主任は,「放射線部と各診療科の医師との協力関係を強化してWSの機能を追究していきたい」と話している。お互いにアイデアを出し合うことで,治療や手術に有用な3D画像を提供できるようすることが,これからは重要になってくる。同院にとって欠くことのできない診療支援ツールとなっているネットワーク型WSであるが,今後さらにその活用の場面を増やし,より多くの患者さん救命につなげることが望まれる。

(2012年1月24日取材)

医療法人 寿会 富永病院

医療法人 寿会 富永病院
住所:〒556-0017 大阪府大阪市浪速区湊町1-4-48
TEL:06-6568-1601
病床数:306床(脳卒中ケアユニット16床)
診療科:脳神経外科,整形外科,循環器科,心臓血管外科,内科,麻酔科, リハビリテーション科,形成外科,神経内科,外科,放射線科
http://www.tominaga.or.jp

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