iDose4 × 桜橋渡辺病院
第4世代の被ばく低減技術“iDose4”による心臓CTで,形態から機能情報まで包括的な心臓検査を展開 ─ “ノイズ除去”によって,画質の向上と最大80%の線量を低減

2011-10-1

フィリップスエレクトロニクスジャパン

CT


Brilliance iCTと放射線科スタッフ

Brilliance iCTと放射線科スタッフ

大阪の中心地・梅田にある桜橋渡辺病院は,心臓,循環器疾患を専門とする“ハートセンター”の先駆けとして,1967年の開院当初から高度で専門的な医療を展開してきた。2010年の診療件数は,カテーテル検査996例,インターベンション768例,不整脈に対するアブレーション治療390例,心臓血管外科の開心術146例など,国内ではトップクラスの実績を誇る。
同院では,Brilliance CT 64と256スライスのBrilliance iCT (フィリップスエレクトロニクスジャパン)の2台体制で心臓CT検査を行っているが,今年4月,フィリップスの第4世代の被ばく低減技術である「iDose4」が,世界に先駆けて導入された。逐次近似画像再構成法を用いたiDose4のポイントと心臓CT検査におけるインパクトを,心臓・血管センター画像診断科長兼放射線科部長の小山靖史科長と放射線部の堀江 誠主任に取材した。

■心臓・循環器に特化した診療を高度で専門的な体制で提供

小山靖史 科長

小山靖史 科長

堀江 誠 主任

堀江 誠 主任

桜橋渡辺病院では,2006年からBrilliance CT 64による心臓CT検査を開始,2010年にはBrilliance iCT(256スライス)を導入し,これまで1万3000件を超える心臓検査を行ってきた。小山科長は,同院での心臓CT検査のコンセプトを次のように語る。
「最新の機器やワークステーションをそろえるだけではなく,それを生かした運用体制をいかに構築するかが重要です。そのために,専門性の高いスタッフの育成と検査業務体制の構築,患者さんへの情報の提供や近隣の医療機関との連携,インターネット予約など検査予約システムの充実,包括的な情報提供を行うレポーティングシステムの構築などを行いました。心臓CT検査で重要なことは,詳細な結果報告だけではなく,検査結果を蓄積したデータベース(DB)を構築し,それに基づいた解析を行って,エビデンスのある質の高いレポートを提供することです。DBの構築は,新任教育やスタッフのスキルアップにも役立ちます。その意味で,包括的な画像診断を行う流れをトータルに構築することが,診療の質の向上になり,さらには検査件数の増加にも繋がっています」

iDose4を搭載したBrilliance iCT

iDose4を搭載したBrilliance iCT

同院の心臓CT検査では,単純CTによる石灰化スコアとメタボリックシンドローム検査を行う“非造影冠動脈硬化検査”と,冠動脈の狭窄度などの形態評価と心筋の機能的評価,さらにプラーク解析までのトータルな診断を提供する"造影冠動脈CT検査"を実施している。小山科長は,「心臓CTでは,心疾患の発症リスクと,被ばくや造影剤などによる侵襲を考慮して,検査の戦略を立てることが重要です。当院では,これまでの検査DBの解析から,症状の有無や年齢,性別で判断し,発症リスクが低い場合には非造影の石灰化スコアなどによるアプローチを行います。反対に,発症リスクが高い場合は,あらゆる情報を抽出することが画像診断の責任であると考え,形態診断から機能までを合わせた包括的なレポートを作成しています」と言う。
造影冠動脈CT検査で作成される包括的診断レポートでは,石灰化スコアと内臓脂肪,CTA,Plaque,Volumetric Plaque Analysisの形態評価と,Function,VVM,EP functionの機能評価などを提供している。
同院では,効率的で安全な検査のために分業体制をとっている。看護師は,受付から問診票の作成,寝台へのセッティング,造影剤のルート確保までを行い,診療放射線技師は撮影のポジショニング,息止めの練習などを担当する。心臓のデータ解析は,650症例以上の解析の経験を積んだ専門技師5名が担当する。解析には,フィリップスの画像解析用ワークステーション(WS)であるExtended Brilliance Workspace(EBW)9台とサーバタイプのEBW Portalシステムを使用。形態情報と機能解析のデータが一覧表示できる診断支援システムComprehensive Imaging Viewerを併用し,小山科長の独自開発による,心臓CT解析に特化したレポーティングシステムComprehensive Cardiac Reporting Systemでレポート作成を行っている。

EBWやComprehensive imaging viewerを駆使して,包括的な心臓レポートを作成する。

EBWやComprehensive imaging viewerを駆使して,包括的な心臓レポートを作成する。

 

■iDose4のノイズ除去技術が可能にする心臓CT

図1 iDose4の概念図

図1 iDose4の概念図

同院では,2011年4月,フィリップスの新しい被ばく低減技術であるiDose4を導入した。iDose4は,2010年の北米放射線学会(RSNA)で発表された,逐次近似画像再構成法(Iterative Reconstructure:IR法)を用いたiDoseの第4世代の被ばく低減技術であり,桜橋渡辺病院が世界で最初の導入病院となった。iDose4では,Projection Space(生データ領域)のサイノグラムに対して逐次近似法によりノイズ成分を除去し,さらにImage Space(画像データ領域)でアナトミカルモデル,統計学的ノイズモデルに基づき繰り返し逐次近似計算を行う。2つの領域で,それぞれ逐次近似計算を行うことで,ノイズを除去しCT特有のアーチファクトも抑制する技術である(図1)。小山科長は,「iDose4の最大の特長は,優れたノイズ除去(デ・ノイズ)技術です。撮影時の線量が不足して画質が劣化することはよく経験することですが,iDose4ではそういったデータからノイズ成分を大幅に除去することで,低線量での撮影を可能にしました。これまでのCTの画像再構成法であるFiltered Back Projection(FBP)法とは,根本的に違うアプローチをしていることが大きな特長です」と強調する。
MDCTの登場で可能になった心臓CTでは一般的に,ヘリカルスキャンによるレトロスペクティブ心電図同期法による撮影から,プロスペクティブな心電図同期とアキシャルスキャン法を採用することで,被ばく線量を13~14mSvから2~3mSvに低減した。さらに,CTの検出器を多列化することで1回転で心臓全体の撮影が可能になった装置も出現した。しかし,1回転(アキシャルスキャン)による撮影法は,課題もあると,小山科長は言う。
「アキシャルスキャン法は,確かに被ばく線量を削減しますが得られる情報量も少なくなってしまいます。また,現在のCTでは,最速の回転速度(ハーフ再構成)でもMRIやSPECTの時間分解能と比べて一桁及びません。各社のCTのアキシャルスキャンによる検査では,βブロッカーを使っても成功率は5~6割程度というデータが出ており,これでは確実な検査とは言えません」
同院では,心臓CT検査にフィリップスのBrillianceシリーズを導入してきたが,256スライスのiCTは,0.27秒/回転の高速回転と80mmの検出器を搭載し,心臓検査においてBeat to Beat Delay AlgorithmやMaxCycleといった最適の心位相を選択する機能などで,心臓CT検査で大きなアドバンテージを持っている。小山科長は,「フィリップスのCTでは,心拍変動を前提とした心臓のデータ収集アルゴリズムの搭載などによって,ヘリカルスキャンでの撮影の方が時間分解能が高く,心臓の機能画像まで含めた撮影が可能です。当院では,iCT導入後,ほぼ全例でβブロッカーを使わずに検査を実施しています」という。
その上で小山科長は,iDose4を適用した心臓CTについて,「iDose4は,確実に多くの情報が得られるヘリカルスキャンと組み合わせることで,被ばく線量と情報量のトレードオフをすることなく,低線量で理想的な心臓CT検査を可能にしました」と評価する。

●ノイズ除去によって画像解析の精度が向上

図2 iDose4の線量(横軸)と画質(縦軸)の関係

図2 iDose4の線量(横軸)と画質(縦軸)の関係

iDose4では,同等の線量であれば従来のFBP法と比べて,空間分解能を68%向上できる。反対に,FBP法と同等の画質であれば,被ばく線量を80%削減することが可能になる(図2)。iDose4では,ノイズ除去の程度によって,レベル1(画質優先)~7(低被ばく優先)までの間で,撮影の目的に合わせて設定する(図3)。
iDose4による画質の向上が,心臓の画像診断にもたらすメリットについて,小山科長は,CPRなどでのステントの視認性や内腔狭窄の診断能の向上という視覚的な情報もさることながら,画像解析の元データとして,WSでの自動認識や血管抽出などの精度が上がることへの寄与が大きいという。
「EBWで心臓の4室を自動的にセグメンテーションするFuzzy Region Growing Algorithmの解析では,iDose4を適用したデータによって,心筋や内腔の自動認識の精度が飛躍的に向上し,短時間で処理が可能になりました。冠動脈の自動抽出でも,これまでノイズによって自動的に追随できなかった末梢血管の抽出能が向上し,より多くの血管を検出できるようになりました。iDose4による解析データの精度の向上は,心臓検査全体の診断ワークフローを短縮できるのではないかと考えています」

図3 iDose4の適応レベルと被ばく線量低減率

図3 iDose4の適応レベルと被ばく線量低減率

 

●検査のワークフローに貢献するiDose4の高速画像再構成

逐次近似法による被ばく低減処理の課題のひとつは,膨大な計算処理を行うために,画像再構成に時間がかかることだった。堀江主任は,実際の検査から解析,レポート作成までのワークフローを踏まえて,次のように語る。
「iDose4で一番驚いたのは,処理時間の速さです。スキャン終了と同時に,ほぼ待ち時間なく画像が表示されます。iDose4の高速画像再構成は,解析精度の向上と合わせて,短時間で多くの画像処理,解析が要求される心臓CT検査のワークフローにとっては大きなアドバンテージです。心臓の撮影では高齢の方も多いので,息止めの不良から再撮影が必要なケースもあり,画像がすぐに確認できるメリットは大きいですね」
再撮影の場合も,iDose4であれば,さらに被ばく線量を抑えた撮影が選択できるため,より低侵襲の検査を行うことができると堀江主任は言う。
「再撮影は,従来の心臓CTでは,トータルの被ばく線量が気になって躊躇することもありました。iDose4であれば,Step&Shoot法で低電圧CT撮影を選択することで,0.6mSvかつ25~35mLの造影剤で内腔評価が可能な画像が得られます。これは,検査の際に大きな安心感に繋がります」

●BMIを基準にiDose4の適用レベルを決定

図4 桜橋渡辺病院におけるiDose4適用レベル選択の基準

図4 桜橋渡辺病院におけるiDose4適用レベル選択の基準

iDose4では,どのような患者でどのレベルを選択するかの基準を設定することが,被ばく線量の削減と画質のバランスの取れた検査を実施するポイントになる。同院では,iDose4のレベル選択について,検査DBに登録された8164件の検査データを基に検証を行い,患者のBMIを基本にしたルールを作成した(図4)。堀江主任は,「個人にあった適正な撮影を行うためには,判断の基準となるルールを設けて,あとは患者さんに合わせて現場で運用することが必要です」と説明する。
同院では,従来のFBP法と同等の画質を得ることを基本として,高分解能画像が必要な場合にはレベル1を,成人ではBMIに合わせてレベル2~5を選択し,小児や若年者,女性,造影剤の量を減らしたい時や,冠動脈スクリーニングの際には,低被ばく優先でレベル6,7を使用する。堀江主任は,「今後も検証を続けていく予定ですが,現状では問題なく検査が行えています。BMIの少ない場合には,さらにiDose4のレベルを上げた,低線量での撮影も可能になるのではないかと考えています」と言う。

●60%線量低減で従来データとの相関性が得られる

画像再構成法の変更は,石灰化スコアなど蓄積されてきた検査データとの整合性が課題となる。iDose4では,空間分解能の向上に伴ってボリュームが小さく表示されることも考えられるため,同院では石灰化スコアに関して,iDose4導入後の連続120例について心筋(Myocardium),内腔(LV cavity),Soft tissueについて検証を行った。その結果,iDose4の適用レベルを変えると,いずれもSD値(ノイズ)は減少するが,CT値には変化がないことがわかった。さらに,ボリュームスコアについての従来データとの相関を見ると,レベル5(60%被ばく低減)以上のリダクションを行うと1に近づき,相関性が高くなることが明らかになった。小山科長は,「iDose4では,1mSv以下の被ばく線量の方が従来の画像に近づくわけで,むしろ被ばく線量を下げたレベルを使うべきだということです」と,iDose4のメリットを強調する。

iDose4の効果

 

■低線量ヘリカルスキャンによる包括的な心臓CT検査を展開する

iDose4が心臓CTに与えたインパクトについて小山科長は,「CTの発明から40年が経過しましたが,従来のFBP法とまったく異なるデ・ノイズという概念で被ばく線量を大きく削減できるiDose4は,心臓CTにとってヘリカルスキャンの登場に匹敵する大きな変革だと言っていいでしょう。それだけに,今後はiDose4がどの機種にも標準装備されて,日常臨床で使われていくことを期待しています」と語る。
iDose4を適用すれば,石灰化スコアの計測,冠動脈内腔評価,冠動脈と壁の評価,アブレーション治療のアセスメント,心筋評価,造影心筋と心筋性状など,ほとんどの検査が1mSv以下で行える。128/256スライスCTのヘリカルスキャンとの組み合わせによって,解剖学的形態情報から性状評価,機能情報までを2~3mSvの線量で得ることが可能になった。小山科長は,iDose4が心臓検査にもたらすメリットを,「冠動脈の内腔評価であれば,低電圧CTとStep&Shoot法の組み合わせによって0.25mSv程度と,一般撮影2~3枚の線量で冠動脈が見える時代になりました。当院では,刺激伝導系の流れを画像化する"Contraction"の解析を行っていますが,今後は心筋遅延造影などの機能情報を含めたCT検査が,低被ばくで可能になることが期待されます」と言う。
堀江主任は,「冠動脈に関しては64列ですでに十分評価が可能でしたので,iDose4による心臓検査では薬物負荷による心筋評価など,機能的な情報の収集に取り組んでいきたい」と述べる。
小山科長は,iDose4によって,低被ばくで心筋評価やプラークのフォローアップ検査まで可能になることで,薬物療法の治療効果判定を定期的にCTで行うことも可能になるのでは,と期待する。
「これまで被ばくを考慮して,1年に1回しかCTでフォローアップができなかったケースでも,iDose4では半年程度の期間でも治療効果が観察でき,より効果的な治療戦略を立てることができます。iDose4により,治療サイクルの中でより短期間でCT検査を効果的に行うことができ,心臓へのアプローチの可能性が広がります」
逐次近似画像再構成法を用いたiDose4による被ばく低減技術がもたらす,CTの新たな可能性に期待が集まる。

(2011年8月9日取材)

特定医療法人渡辺医学会 桜橋渡辺病院

特定医療法人渡辺医学会 桜橋渡辺病院
住所:〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田2-4-32
TEL:06-6341-8651
病床数:171 床
http://www.watanabe-hsp.or.jp/

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