2012年3月24日(土),全国家電会館(東京都文京区)において,「遠隔画像診断サービス業界フォーラム構築に向けて」第1回勉強会が開催された。この勉強会は,医療分野へのITの普及や地域連携の広がりの中で成長してきた遠隔画像診断サービスにかかわる事業者や読影医,メーカーの意見交換,交流を図るフォーラムの設立をめざして設けられた。フォーラム構築に向けた準備会の世話役代表は,石垣武男氏(名古屋城北放射線科クリニック)が務める。
勉強会は,石垣氏と中安一幸氏(厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室室長補佐/北海道大学大学院保健科学研究院客員准教授)を進行役にして進められた。まず,石垣氏が遠隔画像診断を行う上で,画像の信頼性やレポートとの整合性,ビューワの操作性といった安心して読影ができる環境の担保が重要だと説明。そのためにも業界全体の共通認識が必要だと,フォーラムの意義に言及した。また,石垣氏はフォーラムの活動を通じて,遠隔画像診断の精度保証や質の向上・維持,医学・情報技術・法制面のリスクを回避するためのルールの認識やノウハウの共有,損害賠償制度の確立といったことに取り組みたいと述べた。
この石垣氏の挨拶に次いで,中安氏が,勉強会はアカデミックではなく,より実務的な情報や問題を共有する場としたいと述べた。そして,「遠隔画像診断サービスに関する,ちょっと気になること」と題して,サービスにかかわる法制面などの課題について,テーマごとに説明していった。中安氏はまず医師法第20条の解釈に関し,「対面診療」や「通知」を遠隔画像診断サービスおいて,どのようにとらえるかの考えを示した。さらに,中安氏は,遠隔画像診断サービスの訴訟リスクを取り上げた。この訴訟リスクについては,指定発言が設けられ,(株)メディカルイメージラボの平澤之規氏が,実際に経験した病変の見落としがあった際の依頼元施設との折衝の経験を紹介したほか,遠隔画像診断を対象とした賠償責任保険がないといった問題点を報告した。また,(株)ドクターネットの森脇博信氏が,海外在住の日本人読影医が遠隔画像診断を行う上での医師賠償責任保険について,保険会社の対応など実際の経験を発表した。
これらの指定発言に基づき,会場の参加者との間で,賠償責任保険への加入に関する質疑応答が行われた。
その後も,中安氏がソフトウエアの単独医療医療機器化や診療報酬,共通番号制度であるマイナンバーの医療への対応など,遠隔画像診断を取り巻く話題を挙げ,遠隔画像診断サービスに関連する課題を参加者と共有した。会場からは,このような場は重要であり,次回も期待したいとの意見もあり,盛況のうちに第1回勉強会は終了した。 |