(株)AZEは9月10日(金),シャングリ・ラ・ホテル東京(千代田区)において,医用画像処理ワークステーションAZE VirtualPlaceシリーズの使用経験や最新技術動向などを報告する「INNOVATIVE AZE 2010 TOKYO」を開催した。CTやMRIから発生する画像データ量の飛躍的な増加と,臨床現場における3D画像へのニーズの高まりを受けて,現在,3D画像を院内各所で簡単に有効活用できるネットワーク型WSが注目を集めている。同社のネットワーク型WS「AZE VirtualPlace雷神Plus/風神Plus」も急速にシェアを拡大しており,本会ではその臨床的有用性などがユーザーから報告された。
同社営業・マーケティング統括部長の楠本崇雄氏の挨拶に続き,杏林大学医学部放射線医学教室教授の似鳥俊明氏が座長を務めて2題の講演が行われた。
熊本中央病院放射線診断科部長の片平和博氏は,「AZE workstationの最近の進歩― hardware,softwareそれぞれの進歩について」と題して,特に心臓CT画像解析をテーマに講演した。多列CTの登場によって心臓CTの臨床的有用性が高まり,需要も拡大しているが,一方で,多くの医療機関では,画像解析を行うためのマンパワー不足やWSの台数不足のため,ニーズに十分に応えきれていないのが現状である。また,心臓CTが普及するためには,頻脈などの悪条件下で撮影された画像の読影,3D画像解析結果を院内各所で3D画像として読影可能なシステム環境の構築など,解決しなければならないいくつかの課題が残されている。そこで片平氏は,これらの解決策としてネットワーク型WSを挙げ,その導入のメリットと実際の活用法について詳述した。
ネットワーク型ワークステーションとは,本体WSを1台導入し,院内の電子カルテ端末やPACS端末など複数の汎用PCにクライアントの設定を行うことで,ワークステーション本体と同様の画像処理が可能となるシステムである。ネットワークを介して複数端末から同時に画像解析・参照を行うことが可能なほか,各診療科でも解析結果画像を3Dのまま閲覧可能となり,WS本体を1台導入しただけで複数のWSを導入したのと同じ効果が得られるため,導入初期費用を抑制することもできる。片平氏は,同院でのネットワーク型WSの活用法や実際の処理を動画で示したほか,自動解析機能“AZE Auto Analyzer”や,2010年10月から順次リリースが予定されている同社の高速画像処理WS「FORMULAシリーズ」を紹介し,さらなる高機能化への期待を述べた。さらに,片平氏は,冠動脈CT/MRIのボリューム読影に有用な手法として,厚みを持たせたMIP画像を用いて簡便なマウス操作のみでターゲット部位を任意断面で観察可能とする“Sliding thin slab MIP法”や,CTなどの形態画像とSPECTなどの機能画像の三次元重ね合わせが可能な同社WSの新機能“Fusion EX”の有用性などについて紹介し,心臓CTの課題の多くが解消可能なネットワーク型WSの普及が待たれると述べた。
近畿大学医学部放射線医学教室放射線科診断学部門教授の村上卓道氏は,「肝臓EOB造影MRI診断」と題して,2008年1月に国内で臨床応用可能となったMRI用Gd-EOB-DTPA造影剤の有用性などについて講演した。Gd-EOB-DTPA造影剤の特性や,他のMRI用肝臓造影剤との病変への取り込み方の違い,経時的信号変化の違いなどを踏まえた上で,SPIOやCTHA・CTAPとの診断能の比較や,肝細胞がん診断アルゴリズムにおける位置づけなどについても検証し,Gd-EOB-DTPA造影MRIは,鑑別診断,病期診断,腫瘍の分化度診断,治療法選択,治療効果判定,肝機能診断などにおいて高い有用性が認められると述べた。
講演に続き,同社代表取締役社長の畦元将吾氏とマーケティング部長の伊達信忠氏から, 「どの一瞬も美しく」をコンセプトに開発されたAZE VirtualPlaceシリーズの最上位機種「AZE VirtualPlace FORMULAシリーズ」が発表された。同社独自の高速処理エンジン「FORMULA」と三次元画像生成技術「PRISMA」により,画像処理速度を従来比約20倍に高速化し,画像静止時だけでなく,4D表示や方向変換時にも常に最高画質で表示することができる。AZE VirtualPlace FORMULAシリーズは,2010年10月にスタンドアローン型の製品が発売され,続いて12月にはネットワーク型WSの発売が開始される予定である。また最後に,ネットワーク型WSのクライアントとして,新たに「AZE iPad Client」が登場したことが発表された。 |