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取材報告

2009

日本医療マネジメント学会が電子化分科会を実施


HOSPEX Japan 2009会場
HOSPEX Japan 2009会場

松島照彦 氏(筑波記念病院)
松島照彦 氏
(筑波記念病院)

武藤正樹 氏(国際医療福祉大学)
武藤正樹 氏
(国際医療福祉大学)

今田光一 氏(黒部市民病院)
今田光一 氏
(黒部市民病院)

三原一郎 氏(鶴岡地区医師会)
三原一郎 氏
(鶴岡地区医師会)

藤本俊一郎 氏(香川労災病院)
藤本俊一郎 氏
(香川労災病院)

松本武浩 氏(長崎大学)
松本武浩 氏
(長崎大学)

秋山祐治 氏(厚生労働省)
秋山祐治 氏
(厚生労働省)

津村 宏 氏(東京医療保健大学)
津村 宏 氏
(東京医療保健大学)

講演者によるパネルディスカッション
講演者による
パネルディスカッション

 特定非営利活動法人日本医療マネジメント学会は11月12日(木),東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「HOSPEX Japan 2009」において「地域医療ネットワークのIT化―地域医療連携の現状とこれからのIT化の展望を問う!」をテーマに電子化分科会を行った。「HOSPEX Japan 2009」は,「第38回日本医療福祉設備学会」に併設される展示会であり,医療・福祉関連の設備・機器を中心に紹介される。今回は約200社が出展。11〜13日の3日間の日程で開かれた。

 その会場内で行われた日本医療マネジメント学会の電子化分科会は,始めに,理事である松島照彦氏(筑波記念病院)が,5700名を超える会員数を持つ同学会の活動状況について説明。2010年6月11,12日に札幌で開かれる第12回の学術総会の紹介もした。

 引き続き,国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科の武藤正樹氏を座長に,3題の講演が行われた。まず,黒部市民病院臨床スポーツ医学センター関節スポーツ外科部長の今田光一氏が,「地域連携ネットワークのIT化の現状と展望」と題して講演した。今田氏は,地域連携には,一方向型(脳卒中など),双方向型(糖尿病など),支援型(在宅・終末期医療)の3つのパターンがあるとし,さらに双方向型は,地方と都市部で異なると説明。それぞれのパターンでの連携ネットワークの方法について解説した。また,中核病院だけと連携するケースと,地域全体でデータを共有する場合の利便性やコストなどを比較した。そして,ネットワークを構築する上で,双方向の情報伝達やリアルタイム性が必要か,柔軟な拡張ができるかが,重要なチェックポイントになると述べた。さらに今田氏は,中核病院との連携では一方向の参照系のシステムで,地域全体でのデータ共有では,Microsoft Office Grooveなどの市販ソフトウエアで対応できるとまとめた。

 続いて山形県鶴岡地区医師会副会長の三原一郎氏が講演した。演題は,「医療連携型電子カルテシステム『Net4U』による医療連携の現状と評価」。Net4Uは,経済産業省が2000年度に行った「先進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」の1つとして構築されたもので,医師会内にサーバを置くASP型の電子カルテシステムである。鶴岡地区では,厚生労働省の2007年度の厚生労働科学研究の緩和ケア普及のための地域プロジェクトにこのシステムを用い,在宅緩和ケアを進めている。実際の運用では在宅医,訪問看護師がカルテに所見などを記載するといったことが行われている。三原氏はこのシステムのメリットとして,在宅医療にかかわる主治医,在宅医,訪問看護師の情報共有が図れ,安心感のある医療が提供できていると述べた。一方で,システムの利用者を増やしていくことを課題として挙げた。

 この後,香川労災病院副院長兼脳神経外科部長の藤本俊一郎氏が,「脳卒中地域連携クリティカルパスのIT化とインターネットを用いた運用」をテーマに講演した。同院を中心に設立された香川シームレスケア研究会では,2006年から地域連携クリティカルパスを運用している。「病院前・救急」,「急性期→回復期(維持期)→在宅」,「在宅」の流れの中でのシステムの活用事例を紹介した。また,在宅医療における地域連携クリティカルパスの運用手法や,K-MIX(Kagawa Medical Internet eXchange)を用いた連携の仕組みとその利用実態について報告した。

 休憩を挟んだ後,パネルディスカッションが行われた。まず,公募演題として,長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療情報学准教授の松本武浩氏が,「あじさいネットの5年の運用と広域化に向けての課題」と題して発表した。大村市と長崎医療センターを中心に2004年10月にスタートしたあじさいネットでは,利用した患者数が約9000名で,100弱の医療機関が参加している。さらにネットワークを更新し,オンデマンドVPNを採用して,保守体制も強化し,規模を拡大。長崎市も加わり,長崎大学をはじめ市内の8病院も参加することになっている。松本氏はこうした活動実態を報告した上で,今後は教育や診療支援にも活用していきたいとし,それによって地域医療の質が向上するとまとめた。

 パネルディスカッションでは,武藤氏が司会を務め,講演者4名がパネリストとなった。会場からの質問も交え,地域連携を行う際にデータを保管する場所はどこがよいか,あるいは地域連携をする上での病院側のメリットは何かといったテーマについて意見が交換された。また,このパネルディスカッションの後には,特別発言として,厚生労働省医政局政策医療課医療技術情報推進室室長補佐の秋山祐治氏が,厚生労働省のIT化施策について,同じ時期に行われている行政刷新会議の事業仕分けにも触れながら説明した。最後に,同学会の電子化委員長の津村 宏氏(東京医療保健大学)が,閉会のあいさつを行い,盛況のうちに電子化分科会は終了した。


●問い合わせ先
特定非営利活動法人日本医療マネジメント協会
事務局
TEL 096-359-9099
E-mail jhm@space.ocn.ne.jp