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取材報告

2009

医用画像情報学会秋季大会が熊本で開催


医用画像情報学会秋季 (第155回) 大会の会場 (熊本大学医学部保健学科の楷樹会館)
写真1
医用画像情報学会秋季
(第155回) 大会の会場
(熊本大学医学部保健学科の
楷樹会館)

土井邦雄先生による特別講演
写真2
土井邦雄先生による特別講演

 医用画像情報学会秋季 (第155回)大会(大会長:桂川茂彦氏・熊本大学)が10月3日(土),熊本大学医学部保健学科の楷樹会館2階研修室で開催された(写真1)。医用画像情報学会は,医用画像の処理,評価,撮影技術,およびコンピュータ支援診断 (computer-aided diagnosis: CAD) システムの開発などの研究テーマを対象としている。

 9:00に大会長の開会の挨拶が行われ,大会がスタートした。午前の最初のセッションAでは4つの演題が発表され,そのうち3つは放射線治療におけるコンピュータ支援法の研究開発に関する発表であった。質疑応答では,ゴールドスタンダードの作成など,評価法に関するものが多かった。他の発表は,開腹手術と腹腔鏡下手術による腹腔内脂肪の経時的変化に関する研究であった。この発表から,腹腔内脂肪の観点では腹腔鏡下手術と開腹手術が患者に与える負担に有意差がない,など興味深い内容を聴講できた。

 続いて,5分の休憩を挟んでセッションBが始まった。セッションBで発表された4演題は,先ほどのセッションAとは内容が大きく異なり,撮影技術やそれに関連する画質評価,画質改善に関する内容であった。いずれの発表に対しても,活発な議論が行われた。

 次は特別講演であり,土井邦雄先生 (群馬県立県民健康科学大学学長) が講演を行った (写真2)。土井先生は,CADの研究開発を牽引されてきた研究者なら誰もが知っている有名な先生で,長らくシカゴ大学カートロスマン放射線像研究所で教授としてご活躍されていた。今日は,土井先生が群馬県立県民健康科学大学学長に就任されてから最初の貴重な講演であった。講演は「画像評価からCADまで―画像研究の歴史と変遷―」というタイトルで,土井先生がシカゴ大学で携わっておられた研究内容が紹介された。講演では,単に研究内容を紹介するだけでなく,研究テーマを選択した理由,そのテーマで予想される困難,およびその問題をどう考えて解決したかを詳細に示されていた。この講演を聴講することにより,筆者は内容と共に研究アプローチの観点も参考することができ,有意義な時間を過ごすことができた。これで午前のセッションは終了である。

 昼食休憩を挟んで13:45から午後のセッションCが始まった。セッションCは1演題の取り下げがあったため,4演題の発表であった(筆者の演題発表を含む)。発表内容は,MRI,眼底画像,およびCT画像におけるCADシステムの研究開発であり,評価の方法などが活発に議論された。

 次は,本大会最後となるセッションDである。昨今流行っているインフルエンザの影響で,このセッションでも1演題のキャンセルがあり,3つの演題が発表された。セッションDはいずれも頭部を対象とした演題であり,CT画像やMR画像を対象に病変の検出や領域のセグメンテーションに関する内容であった。質疑応答では,半自動によるセグメンテーションが有用ではないか? などの議論が行われた。

 最後に大会長と学会長(藤田広志先生・岐阜大学大学院医学系研究科教授)の閉会の挨拶があり,本大会は終了した。次回の春季(第156回)大会は, 2010年2月上旬に千葉大学(大会長:三宅洋一先生・千葉大学)で開催予定である。

インナビネット記者 林 達郎(岐阜大学)