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取材報告

2009
第16回日本CT検診学会学術集会 開催
未来型の検診を考える─治りうる肺癌発見の倍増を目指して─

江口研二大会長
江口研二大会長

受付風景
受付風景

ポスター展示発表風景
ポスター展示発表風景

機器展示風景

機器展示風景
機器展示風景

シンポジウム1「肺癌検診に対する考え方─がん関連診療・検診関係者から見た現況と課題─」
シンポジウム1
「肺癌検診に対する考え方
─がん関連診療・検診関係者
から見た現況と課題─」

左から,村松禎久 氏(国立病院機構埼玉病院放射線科),丸山雄一郎 氏(小諸厚生総合病院放射線部門),前田光哉 氏(厚生労働省がん対策推進室),瀧澤弘隆 氏((財)柏戸記念財団ポートスクエア柏戸クリニック),佐藤雅美 氏(宮城県立がんセンター呼吸器外科),斎藤 博 氏(国立がんセンター中央病院がん予防・検診センター),桑島 章 氏(PL東京健康管理センター健診部),大松広伸 氏(国立がんセンター東病院呼吸器内科),芦澤和人 氏(長崎大学医学部・歯学部附属病院がん診療センター),座長の近藤 丘 氏(東北大学加齢医学研究所呼吸器再建研究分野),江口研二 氏(帝京大学医学部内科学講座腫瘍内科)

 第16回日本CT検診学会学術集会が2月13日(金),14日(土)の2日間,江口研二大会長(帝京大学医学部内科学講座教授・帝京がんセンター長)のもと,パシフィコ横浜会議センターにて開催された。がん対策基本法に基づく「がん対策推進基本計画」が2007年に策定され,がん検診の受診率を5年以内に50%にすること,全市町村において精度管理・事業評価が実施されることが目標とされた。現行の肺がん検診でエビデンスが認められているのは,一次検診で胸部X線検査,ハイリスク群ではX線検査と喀痰細胞診の組み合わせである。本学会の研究テーマである低線量CTは,いまだ死亡率減少効果の有無を判断する証拠が不十分とされているものの,近年,任意型検診として普及しつつある。江口大会長はこのような社会的状況を背景に本学術集会のテーマを設定し,今後の方向性を探る内容とした。

 開会式の直後に,「ワークショップ1 肺癌CT検診認定制度の動向」が行われた。座長は,中川徹氏(日立製作所日立健康管理センタ放射線診断科),長尾啓一氏(千葉大学総合安全衛生管理機構)。この認定制度は,低線量ヘリカルCTによる任意型肺がんCT検診の広がりに伴い,精度の低下を防ぎ,検診の質を担保するために導入の必要性が検討され始めた。2007年春,日本CT検診学会,日本医学放射線学会,日本呼吸器外科学会,日本肺癌学会,日本呼吸器学会,日本放射線技術学会の6学会により肺がんCT検診認定制度合同検討会が立ち上げられ,そこでの検討を経て,2009年3月に「NPO法人 肺がんCT検診認定機構」(Japan Accreditation Council for Lung Cancer CT Screening)が設立されることになった。検討会では,認定対象をCT検診認定医師とCT検診認定技師とし,肺がんCT検診に特化すること,6学会が個々に講習会や実習等を実施し認定機構が正式認定すること,5年ごとに資格更新することなどの要件が定められた。本ワークショップは,上記6学会で推進してきた認定制度の現状報告と今後の方向性について報告するものである。

 当初,各学会における認定制度への認識や対応は否定から容認までさまざまであり,紆余曲折を経てこの度の認定機構設立に至った。日本医学放射線学会の取り組みを報告した村田喜代史氏(滋賀医科大学放射線科)は,同学会が否定から承認に至った経緯を説明。2005年頃から始まった「CT検診スクリーナ」という専門技師制度の同学会胸部放射線研究会での議論において,検診現場のマンパワー不足を背景に病変の検出を行う技師と診断を行う医師が必ずペアになることを条件にして理事会に諮ったが,当事は技師の「診断行為」と受け取られて反対された。その後,日本CT検診学会の議論において,肺がん検診に限定して他学会と連携し,認定医師と認定技師をつくって精度管理をきちんと行う仕組みをつくるという方針が決まったことから再度理事会に諮って承認に至ったとした。今春の日本医学放射線学会総会時の4月19日(日)に第1回の講習会をシンポジウム「肺がんCT検診について」として開催することが決定。さらに10月の同秋季大会や胸部放射線研究会でも実施するという。日本呼吸器外科学会ではすでに,第25回日本呼吸器外科学会総会において,第1回肺がんCT検診暫定認定医講習会を開催し,受講した335名に対し受講証が発行された。受講証と専門医証を3月に設立予定の認定機構に提出すれば認定医証が発行される見込みだ。CT検診スクリーナ導入検討時から委員として活動してきた花井耕造氏(国立がんセンター東病院放射線科)は肺がんCT検診認定技師の業務について,画像データ処理・生データ保存の判断,HRCT実施の判断,被ばく管理,精度管理,認定医のもとでの異常所見の検出などとした。第1回講習会と認定試験を1月31日,2月1日の2日間,駒澤大学にて開催。受講資格は臨床経験2年以上の技師とし,469施設・595名の応募から110名の受講者に絞って筆記試験とサーバ管理下のPCを使った異常所見検出試験を実施,103名が合格した。今後は講習会の有効性を評価しつつ認定技師数をどのように増やしていくかが課題とした。この認定制度で検診の質を担保し,国民のニーズに応じて,いつでもどこでも安心して精度の高いCT検診を受けられる体制を構築したいと述べた。

 13日にはまた,シンポジウム1「肺癌検診に対する考え方─がん関連診療・検診関係者から見た現況と課題─」が行われた。江口大会長の発案で,指定討論者9名および会場の参加者による150分のブレインストーミングというユニークなシンポジウムとなった。受診率50%のハードルを越え,真に効果のある検診を目指してをテーマに,現行の胸部X線写真による肺がん検診の課題,検診の学際的研究の必要性などについて,活発な議論が交わされた。冒頭,座長を務めた江口大会長から,平成10年から検診関係予算が地方交付税となって以降,都道府県別のがん死亡率,がん対策予算,がん検診費用などに大きな格差があることが示され,情報を共有するためにもいろいろな組織・立場からの議論が必要だという問題提起がなされた。江口大会長が事前に設けた検討事項のうち,議論できたのは半分にも満たなかったが,さまざまな相違点や課題が浮き彫りになり,今後の活動にとって有意義な150分となった。

  また,13日と14日には,ワークショップ「CT検診の実績を考えるTとU」が開催され,各地域における肺がんCT検診の成績や有効性評価などの発表が行われた。

 次回の第17回日本CT検診学会学術集会は2010年2月12日(金),13日(土),芦澤和人大会長(長崎大学医学部・歯学部附属病院がん診療センター)のもと,長崎ブリックホールにて開催される予定である。


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