取材報告

2006
第8回国際造影超音波シンポジウム開催
世界に先駆けて日本で承認された「ソナゾイド」のセッションに注目

会場風景
会場風景

森安史典 大会長
森安史典 大会長
(東京医科大学消化器内科)

別府慎太郎 大会長
別府慎太郎 大会長
(大阪大学医学部保健学科)


【セッション3】
Nico de Jong 氏
司会:Nico de Jong 氏
(Erasmus University)


松田康雄 氏
司会:松田康雄 氏
(八尾徳洲会総合病院)


松村 学 氏
松村 学 氏
(第一製薬(株)創薬第二研究所)


宮原健夫 氏
宮原健夫 氏
(東京医科大学消化器内科)

 第8回国際造影超音波シンポジウムが12月9日(土),10日(日)の2日間,森安史典氏(東京医科大学消化器内科教授)と別府慎太郎氏(大阪大学医学部保健学科教授)を大会長に,東京医科大学病院本館講堂にて開催された。2007年1月10日には,新しい超音波診断用造影剤「Sonazoid(ソナゾイド)」が,世界で初めて日本で販売が開始される。12月1日に日本で認可された「ソナゾイド」はGEヘルスケア社が創製し,第一製薬が臨床開発・承認を得,国内販売を行う。診断薬が日本で認可されたのは実に5年ぶりであり,ソナゾイドの診断・治療効果については,海外からも大きく注目されていくと思われる。これを受け今回は,ソナゾイドに焦点を当てながら,各国の超音波造影の現状とこれからを考えるシンポジウムとなった。
 
 セッション3「Sonazoidの基礎と臨床」では,ソナゾイド開発者の一人であるGE HealthcareのPer Sontum氏が,「Development concept and physicochemical characteristics of SonazoidTM」と題して講演。毛細血管を自由に移動するサイズと,安定かつ柔軟性のあるマイクロバブルを開発するまでの経緯を説明した。Sontum氏は,最終的にHydrogenated egg phosphatidyl serine(HEPS)とPerflubutane(PFB)の組み合わせがマイクロバブルの構成として最適であるとの結論を得たとした。さらに,マイクロバブルのサイズ,濃度,効果について,溶解後3時間は安定であるとし,ユーザーには2時間以内の使用を勧めると述べた。続いて,第一製薬(株)創薬第二研究所の松村 学氏が,ソナゾイドのマイクロバブルがクッパー細胞に貪食される様子を動物実験で示した結果などを発表した。東京医科大学消化器内科の宮原健夫氏は,クッパー細胞によるマイクロバブルの貪食をソナゾイドを含む各種超音波造影剤で比較した結果や,クッパー細胞と造影効果の関係を述べた。次に,GE HealthcareのPaul B. Gordon氏がソナゾイドの有効性と安全性について講演。臨床試験の結果を示し,肝臓への転移を確認するためにソナゾイドが有効であるとした。最後に,ソナゾイドの日本での治験にPhase I から携わってきた森安史典氏は,「Phase II & III Multicenter Clinical Trials of SONAZOIDTM in Japan for the Characterization and the Detection of Focal Liver Lesions」と題した講演の中で,日本におけるPhase IIとPhase IIIの臨床試験の方法と結果を詳しく述べた。森安氏は,臨床試験の結果から,ソナゾイドを用いた造影超音波では非造影超音波,造影CTに比べて正診率が向上し,1cm以下の新規病変を検出する確率が造影CTより40%も高いとの結果を示した。さらに,治療効果判定や生検・インターベンション時のイメージガイドとしても有効という。安全性については,これまで重篤な副作用が報告されていないとし,また,審査の過程で医師からの評価が非常に高かったと述べた。

 講演後に森安氏は小誌のインタビューに対し,有効性と安全性のエビデンスを示したこと,日本では肝疾患が多いにもかかわらず,欧米で使用されている次世代造影剤の認可がなされていなかった状況などが,ソナゾイドの承認につながったとの考えを示した。今後の動向について森安氏は,肝臓への適用に関してはソナゾイドがレボビストに置き換わっていくだろうとした。第一製薬による臨床医を対象としたマーケットリサーチでは,レボビストを大きく超えるニーズが見込まれる結果が得られ,造影CTからの移行も含めるとより大きな市場になることが予測される。さらに森安氏は,ソナゾイドの普及のために,ソナゾイドに特化した研究会の立ち上げを検討しているとした。今後,ソナゾイドの臨床応用の動向が大いに注目される。


●問い合わせ先
第8回国際造影超音波シンポジウム事務局
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1
東京医科大学消化器内科
TEL 03-3342-6111(内線5912)
FAX 03-3342-3416
E-mail bubble@tokyo-med.ac.jp