取材報告

2006

パーフュージョン画像の標準化をめざし
ASIST-Japanが第1回公開セミナーを開催


セミナー会場
セミナー会場


佐々木真理 氏
 
小川 彰 氏
佐々木真理 氏
(写真1)
 
小川 彰 氏
(写真2)

 

森 悦朗 氏
 
中川原譲二 氏
森 悦朗 氏
(写真3)
 
中川原譲二 氏
(写真4)

 

百島祐貴 氏
 
工藤與亮 氏
百島祐貴 氏
(写真5)
 
工藤與亮 氏
(写真6)

 

酒向正春 氏
 
岡田 靖 氏
酒向正春 氏
(写真7)
 
岡田 靖 氏
(写真8)

 11月4日(土),東京・大手町の経団連会館国際会議場において,ASIST-Japanの第1回公開セミナーが開催された。 テーマは「急性期脳梗塞におけるCT/MR灌流画像の標準化の意義──PMA(perfusion mismatch analyzer)の開発」。主催したASIST-Japanとは,Acute Stroke Imaging Standardization Group-Japanの略称。厚生労働省平成17年度循環器病研究委託費の公募研究課題(17公3)の研究グループで,岩手医科大学放射線科の佐々木真理氏(写真1)が主任研究者となっている。グループは,放射線科医,脳神経外科医,神経内科医などで構成され,多施設にわたり研究を進めている。その目的は,急性期脳梗塞での頭部CT,MRI検査の標準化を図ることであるとしている。また,研究の関連プロジェクトとしては,日本磁気共鳴医学会の研究プロジェクト2「脳梗塞におけるMRI検査の標準化に関する研究」,日本放射線科専門医会・医会の「CT/MRI灌流画像の標準化に関するワーキンググループ」がある。

 急性期脳梗塞の診断,治療方針の決定には,CT,MRI検査が行われるが,装置や施設によって手技や判定法が異なってしまっている。このことは質の高い医療を行う上での問題とされている。特に近年,t-PAの血栓溶解治療が広まりつつある中で,適用を判断する際に生じる施設間格差を解消することは,重大合併症の防止,予後の向上などの観点から求められている。そのためにも,CT,MRI検査の標準化を進め,検査の質を向上させていくことは重要だと言える。

 セミナーでは,まず岩手医科大学脳神経外科の小川 彰氏(写真2)が開会の挨拶を行った。これに続き,来賓の東北大学大学院医学系研究科高次機能障害学の森 悦朗氏(写真3)が壇上に立ち,「パーフュージョン画像の標準化は難しいが,製薬,モダリティメーカーの関心も今後ますます高くなる。研究を進め,海外にもソフトウエアを提供して,世界中にインパクトを与えてほしい」と期待を込めて挨拶した。

 講演1では,中村記念病院脳神経外科の中川原譲二氏(写真4)が座長となり,慶応義塾大学放射線診断科の百島祐貴氏(写真5)がASIST-Japanの活動とパーフュージョン画像の解析ソフトウエアであるPMAの提供について発表した。百島氏は,ASIST-Japanは個別に研究課題を設け,これまで合計10回に及ぶ研究課題別委員会を開催してきたと説明。また,標準化手法の提案内容,「CT/MR灌流画像実践ガイドライン」の進捗状況について述べた。さらに,PMAについて,解析手法の標準化への布石となるものとして公開するとし,その方法や使用条件についても紹介した。

 続く,講演2,3では,PMAを開発した北海道大学放射線医学分野の工藤與亮氏(写真6)が発表を行った。講演2は,初台リハビリテーション病院脳卒中診療科の酒向正春氏(写真7)を座長に,「CT/MR灌流画像の問題点と標準化の意義」と題し,パーフュージョン解析の原理や解析アルゴリズム,aLUTなどの標準化について取り上げた。また,講演3では,国立病院機構九州医療センター脳血管内科の岡田 靖氏(写真8)を座長に,PMAの概要と操作方法について説明した。PMAは,Windows XPで動作し,LUT,AutoWindow,VPE,対側比という標準化項目を実装している。工藤氏は,PMAの解析方法について,現時点で最も妥当なものを使用しているとも述べた。

 セミナーの最後には,佐々木氏がASIST-Japanの今後の活動などを含めて閉会の挨拶を行い,セミナーを締めくくった。


●問い合わせ先
ASIST-Japan
http://plaza.umin.ac.jp/~asist/topPage.htm