取材報告

2006

ブレストピア・ヘルスケアグループが
プレス向け乳がんセミナーを開催


セミナー風景
セミナー風景

難波 清 氏
難波 清 氏
(写真1)

坂元吾偉 氏
坂元吾偉 氏
(写真2)

仲眞美子 氏
仲眞美子 氏
(写真3)

 ブレストピア・ヘルスケアグループは9月6日(水),「乳がん死ゼロ,乳房喪失ゼロのために 〜今知るべきこと,すべきこと〜」と題し,プレス向けセミナーを開催した。同グループは,乳腺疾患の専門医療機関であるブレストピアなんば病院を中核施設とする医療法人。女性の心と体を統合的に考えた医療に取り組んでいる。

 第1回となるセミナーでは,最初に,同グループ代表の難波 清氏(写真1)が,検診,診断,手術,診療の初期プロセスに沿って乳がん治療の現状と問題点を説明した。

 日本人の死亡原因第1位である悪性新生物による死亡者数は増加を続けている。女性では,がんの部位別罹患率の中で乳がんが一番高く,2004年には年間死亡者数が1万人を超えた。同グループでは,ほぼ100%の生存率と,乳房を安全に残す治療が可能な状態を「超」早期と位置づけ,発見に力を入れている。そのためには適切な検診が求められるが,現状ではいくつかの問題点があると難波氏は指摘した。

 また,難波氏は検診に用いられるマンモグラフィや超音波検査といった画像診断には高度な専門性と経験が求められると言及。しかし,必要なレベルの技術を持つ医療機関が少なく,検診の次の精密検査を行う機関も同様であると述べた。さらに,精密検査を行う医師は慢性的な不足状態にあり,画像診断の普及に医師の技術が伴っていないと指摘。医師不足だけでなく,関連学会や行政の理解不足と専門機器や技術が適切に診療報酬に反映されていないことが原因していると述べた。

 難波氏は,これらの問題解決の一歩として,同グループの統合ヘルスクリニックであるイーク丸の内において,診断から初期治療に特化した「乳がん診断外来」を2006年10月をメドに開始すると発表した。

 続いて,(財)癌研究会癌研究所の坂元吾偉氏(写真2)が「乳がん診療における病理診断」をテーマに,乳がん診断における病理検査の重要性と精密検査に潜む問題点について講演。坂元氏は,乳がんの病理診断は良性と悪性の判断がつきにくいことを強調し,患者が診断結果に不安を 持った場合でも,別の医師に見てもらう場がないことは問題であると述べた。イーク丸の内で行われる予定の「乳がん診断外来」では,坂元氏が病理診断の再確認を行うとしている。

 ブレストピアなんば病院では,乳がん治療の最先端技術である,MRガイド下集束超音波手術(MRgFUS)に取り組んでいる。3番目の講演として,同院理事長でもある難波氏が,MRgFUSの技術と現状について解説した。 MRgFUSは,MRIでリアルタイムに病巣の位置と治療効果を確認しながら,超音波のエネルギーを一点に集束させてがんを照射し,熱凝固治療する。人体にほとんど無害な超音波とMRIのみで治療が行えるため,乳房を傷つけず,また,安全に治療ができる。そのため,乳がん治療において求められる整容性の面からも期待が大きい。

 MRgFUSの手術装置は現在,世界で39台が稼働している。世界で唯一,MRgFUSによる乳がん治療を行っている同院では,乳がんに対する国際的な臨床試験にも参加している。臨床試験BC003の結果からは,MRgFUSは症例を選べば従来の部分切除術と遜色のない局所療法であるとの結論を得ている。現在は,BC004に取り組んでおり,100例を目標に,1.5cm以下のしこりに対してFUSと放射線治療を併用し,効果の経過観察を行っている。難波氏は,これらについて説明した上で,MRgFUSに興味を持つ医師とのネットワークづくりにも取り組み,国内外において臨床試験に賛同する医師と協力し合える体制を整えていきたいと述べた。

 最後に,イーク丸の内の仲眞美子院長(写真3)が,女性のためのクリニックとして,がんやそのほかの生活習慣病のリスクを軽減するためのサポートを,別に取り組んでいく計画を示した。

 セミナー後に設けられた質疑応答では,MRgFUSに対して多くの質問が集まり,侵襲性の低い乳がん治療に対する関心の高さが感じられた。


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