取材報告

2006
第25回日本医用画像工学会大会 開催
JAMIT Annual Meeting 2006

京都大学百周年時計台記念館
京都大学百周年時計台記念館


ステージプレゼンテーション風景
ステージプレゼンテーション
風景


特別シンポジウム総合討論風景
特別シンポジウム
総合討論風景


湊小太郎大会長
湊小太郎大会長
(写真1)

富樫かおり氏(左)杉本直三氏(右)
富樫かおり氏(左)と
杉本直三氏(右)
(写真2)

篠田英範氏(右)喜多紘一氏(左)
篠田英範氏(右)と
喜多紘一氏(左)
(写真3)


松田哲也氏(左)湊小太郎氏(右)
松田哲也氏(左)と
湊小太郎氏(右)
(写真4)


米倉義晴氏(左)平岡真寛氏(右)
米倉義晴氏(左)と
平岡真寛氏(右)
(写真5)

 第25回日本医用画像工学会大会(JAMIT 2006)が7月21日(金),22日(土)の2日間,湊小太郎大会長(奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科教授 写真1)のもと,京都大学百周年時計台記念館を会場に開催された。今回は,一般演題のポスター発表は設けられず,すべて口演となった。また,「分子イメージング」の特別シンポジウムをはじめ,4つのシンポジウムが企画され,本学会がテーマとする医工連携による技術革新と臨床への展開が議論された。今回初めての企画として,医用画像・医療情報関連各社による最新の製品や開発コンセプトを紹介するステージプレゼンテーションが設けられ,2日間とも立ち見が出る盛況ぶりだった。

 初日には,CADと電子カルテに関する2つのシンポジウムが行われた。まず,シンポジウム1「CADの新展開」では,胸部や脳などの各部位を対象としたCADに関する研究成果や,今後,実際的には多臓器を一挙に検査する臓器疾病横断型のCADシステムを構築する必要があることなどが発表された。実用化が遅れているわが国のCADシステムの現状を世界的な視野で論じた総括発表では多くの課題が浮きぼりにされた。

 次に,「相互運用性を確保した電子カルテのための標準化」と題したシンポジウム2では,放射線医学総合研究所で導入したIHE対応システムの紹介や,放射線部門におけるIHE利用の問題点とメリットが発表された。そのほか,2003年から開始され,2005年度は28社・61システムが参加した,IHE-Jコネクタソンの現状と課題として,コネクタソンを将来的にはオンラインで行う計画などが示された。またEHR構築の基盤として画像の統合プロファイルであるXDS-Iが例として紹介され,標準的なEHRシステム実現の課題について論じられた。

 2日目は,まず,シンポジウム3「医用VRと生体機能シミュレーション」で,術前VRリハーサルの可能性とその研究成果の講演や,学習効果や発展性などに関してVRは有用であるとしながらも,価格が高いことから汎用に至るには問題があるとの見解が示された。

 最後に,「分子イメージング」をテーマにした特別シンポジウムが行われ,まず,分子イメージング学会初代会長である藤林靖久氏が,「分子イメージングの現状と将来」と題して講演。アメリカ,ヨーロッパと日本を含めたアジアの分子イメージング研究に対する取り組みと現状を述べた。分子イメージングの方法論としてOptical Imaging,PET,SPECT,MRIを比較し,その長所と短所を説明した。今後は,個々の独立した分野の研究から,各医師や研究者が次のステップへつないでいく意志と努力が求められていくと締めくくった。また,第2回分子イメージング学会が2007年6月,福井県において開催される予定であると述べた。

 次に,佐治栄郎氏が「分子プローブの開発」と題し,PETの代表的なプローブであるF18-FDGを用いて,腫瘍に対する治療計画および治療効果判定が可能であると述べた。新たな分子プローブ研究を進めていく上でのポイントとして,(1)何を標的にするか,(2)シグナルをどのようにつくっていくか,(3)それをどう測定するか,の観点が必要であるとし,例として抗腫瘍抗体を標識したプローブなどを紹介した。さらに,遺伝子レベルのイメージングでは,mRNAに特異的な配列を標識する直接的イメージング,レポータージーンを導入し,発現タンパクをイメージする間接的イメージングの研究について述べた。

 続いて,企業の技術者による講演が4題設けられ,MRI,CT,PET,光イメージングの技術と分子イメージングにおける展望が発表された。
 最後に座長でもある平岡真寛氏が,「日本における分子イメージングの研究開発の今後」と題し,幅広い観点から日本の現状と今後について述べた。日本が分子プローブ,イメージング機器研究において欧米に対する遅れに追いつくには,国策としての支援,体制の整備,人材の育成などが必要であるとの考えを示した。

 次回の第26回日本医用画像工学会大会は,2007年7月20日(金)と21日(土)の2日間,武田 徹大会長(筑波大学)のもと,つくば国際会議場(エポカルつくば)にて開催される予定である。

シンポジウム1 「CADの新展開」
司会:富樫かおり(京都大学)写真2左,杉本直三(京都大学)写真2右
真田 茂氏

1:フラットパネルX線ディテクターを用いた 動態機能診断支援
 真田 茂(金沢大学大学院医学系研究科)

内山良一氏 2:脳MRのCAD
 内山良一(岐阜大学大学院医学系研究科)
石津浩一氏 3:臨床医から見たCAD;3次元非剛体重ね合わせ技術の利用と展望
 石津浩一(京都大学大学院医学研究科)
木戸尚治氏 4:臓器疾病横断型CAD研究のためのデータベース
 木戸尚治(山口大学大学院医学系研究科)
藤田広志氏 5:世界と日本におけるCADの現状(総括)
 藤田広志(岐阜大学大学院医学系研究科)
シンポジウム2 「相互運用性を確保した電子カルテのための標準化」
司会:篠田英範(東芝メディカルシステムズ)写真3右,喜多紘一(東京工業大学)写真3左
安藤 裕氏 1:IHE-Jを導入した電子カルテシステムの構築
 安藤 裕(放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院)
喜多紘一氏 2:個人情報保護とIHEのセキュリティプロファイル
 喜多紘一(東京工業大学像情報工学研究施設)
吉村 仁氏 3:IHE-Jコネクタソンの現状と課題
 吉村 仁(コニカミノルタエムジー(株))
細羽 実氏 4:EHR構築に向けたIHE統合プロファイル
 細羽 実(京都医療技術短期大学診療放射線技術学科)
千村 浩氏 5:厚生労働省からみたIHE-J
 千村 浩(厚生労働省医政局)
堀口 光氏 6:経済産業省における医療情報化施策の概要
 堀口 光(経済産業省商務情報政策局)
シンポジウム3 「医用VRと生体機能シミュレーション」
司会:松田哲也(京都大学)写真14左,湊小太郎(奈良先端科学技術大学院大学)写真14右
田辺政裕氏 1:シミュレータを利用した臨床技能教育
 田辺政裕(千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター)
中尾 恵氏 2:外科手術計画におけるバーチャルリアリティ
 中尾 恵(奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科)
北岡裕子氏 3:多時相CT画像解析と力学シミュレーションによる「3Dスパイログラム」の提案
 北岡裕子(大阪大学大学院医学系研究科)
天野 晃氏 4:電気生理学モデルに基づく心臓拍動シミュレーション
 天野 晃(京都大学大学院情報学研究科)
特別シンポジウム 「分子イメージング」
司会:米倉義晴(放射線医学総合研究所)写真5左,平岡真寛(京都大学)写真5右
藤林靖久氏 1:分子イメージングの現状と将来
 藤林靖久(福井大学高エネルギー医学研究センター放射線医学総合研究所分子イメージング研究センター)
佐治英郎氏 2:分子プローブの開発
 佐治英郎(京都大学大学院薬学研究科)
小原 真氏 3:MRIを用いたモレキュラーイメージング
 小原 真(フィリップスメディカルシステムズ(株))
市原 隆氏 4:CTによる分子イメージング支援の現状
 市原 隆(東芝メディカルシステムズ(株))
北村圭司氏 5:PET装置開発における最近の成果と将来展望
 北村圭司((株)島津製作所)
山下 豊氏 6:光による生体イメージング
 山下 豊(浜松ホトニクス(株))
平岡真寛氏 7:日本における分子イメージング研究開発の今後
 平岡真寛(京都大学大学院医学研究科)

●問い合わせ先
日本医用画像工学会事務局/第25回日本医用画像工学会大会事務局
TEL 03-5684-1636 FAX 03-5684-1650
E-mail office@jamit.jp