取材報告

2006
フィリップス,三重大学医学部附属病院と共同で
心臓MRI教育センターを設立

上條誠二 氏
上條誠二 氏
(写真1)

竹田 寛 氏
竹田 寛 氏
(写真2)

佐久間 肇 氏
佐久間 肇 氏
(写真3)

吉瀬 哲 氏
吉瀬 哲 氏
(写真4)

 (株)フィリップスエレクトロニクスジャパンメディカルシステムズは3月29日(水),記者説明会を行い,三重大学医学部附属病院と共同で,国内初となる心臓MRI教育センターの設立を発表した。同センターは三重大学医学部付属病院内に設置され,心臓MRI検査のスペシャリストを養成することを目的に4月から本格的に稼働する。医師,診療放射線技師それぞれを対象にプログラムを設け,年4回の開催を予定している。1回3日間のコースで実施され,定員は約10施設。主にフィリップスのMRIの導入予定施設を対象に有償で行われる。記者説明会には,上條誠二代表取締役メディカルシステムズ社長(写真1)をはじめ,三重大学医学部附属病院副院長の竹田 寛画像診断科教授(写真2),佐久間 肇画像診断科助教授(写真3)ら出席。センター設立の趣旨や,心臓MRI検査の有用性と将来展望について説明した。

 日本人の死亡原因で悪性新生物の次に多いのが心疾患だが,なかでも心筋梗塞,狭心症などによる死亡率は高い。それだけにこれらの虚血性心疾患に対する診断は非常に重要なものとなっている。現在,64列マルチスライスCTによる検査のほか,SPECT検査,血管撮影検査が行われているが,被曝や侵襲性,コストの面で,MRIによる心臓検査のメリットは大きい。また,心臓MRI検査は,心筋血流,心筋バイアビリティなど心臓の機能と冠動脈の形態を総合的に評価でき,心筋梗塞や狭心症の診断能が高いといった特長を持つ。しかし,日本においては,世界的に見てもMRI装置の導入が進んではいるものの,心臓MRI検査の有用性は認知されていないのが現状である。さらに,教育やトレーニングの機会がほとんどないことから,心臓MRI検査は普及していなかった。

 そこで,フィリップスと同社のMRIを用いて心臓検査を行っている三重大学医学部附属病院が協力し,今回発表された教育センターを院内の第3MR室,中央放射線部ゼミナール室に設けた。プログラムの策定や指導は,心臓MRIの第一人者である佐久間助教授が理事長を務めるNPO法人「心臓MRハンズオン」に業務を委託して行われることになっている。プログラム概要を説明した同社戦略学術企画の吉瀬 哲部長(写真4)によると,3日間のプログラムでは,1日目を基礎編,2日目を臨床編,3日目を実習編としてカリキュラムを組んでいるという。内容は,「循環器診療における各種画像診断の役割」をはじめ,検査見学や症例検討会などとしている。

 記者説明会では,上條社長が,「心臓MRI検査は有用であるものの普及していない。MRIのマーケットリーダーであるフィリップスとして,日本で広く心臓MRI検査が行われるようにしていきたい」とセンター設立の目的を説明。竹田教授は,被曝がなく,コストもSPECT検査の1/2程度しかかからない心臓MRI検査は,虚血性心疾患の診断には効果的だが,検査のための教育,トレーニングが不足していると指摘。そのための環境を提供する同センターの重要性を強調した。また,実際に指導を行う佐久間助教授が,Whole heart 3D coronary MRAなど,三重大学医学部附属病院で行っている心臓ルーチン検査を説明しながら,その有用性について述べた。佐久間助教授は,従来,X線冠動脈造影と負荷心筋SPECTが中心だった検査が,心臓MRI検査が普及することで,CTAと負荷心筋血流MRI,遅延造影MRIを組み合わせた,低侵襲,低コストのものになると説明。将来的には,検診にも使われ,発症前の予防,治療にもつながっていくだろうと期待を示した。

 佐久間助教授によると,2005年の時点で,1.5TのMRIは1845病院が導入しており,約713万件の検査を行っているが,そのうち心臓MRI検査は176病院,約2万3200件(0.33%)しか行われていないという。心臓MRI検査普及のためにも,今回設立された教育センターの使命は大きいと言える。


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