取材報告

2006
島津製作所,“第83回レントゲン祭”を開催
直接変換方式FPD,新アプリケーションでさらなる進化

松山恒和 氏
松山恒和 氏
(写真1)

祭詞・献花を行う 服部重彦・代表取締役社長
祭詞・献花を行う
服部重彦・代表取締役社長
(写真2)


柴田幸一 氏
柴田幸一 氏
(写真3)


平野浩志 氏
平野浩志 氏
(写真4)

 2005年に創業130周年を迎えた株式会社島津製作所は,恒例の“第83回レントゲン祭”を2月10日(金),同社三条工場(京都・中京区)において開催した。式典では,松山恒和氏(同社取締役 医用機器事業部長,写真1)が,「安心と信頼のある医療を確保するために,信頼のブランド島津として技術に磨きをかけ,デジタルX線の技術に特化・進化させることで医療に貢献すべく,たゆまない挑戦を続ける」と式辞を述べた後,服部重彦氏(同社代表取締役社長)により祭詞・献花が行われた(写真2)。同社がキーデバイスとして14年間開発を進めてきた直接変換方式FPD装置は,2004年から循環器システム,X線テレビシステム,一般撮影システムと順次製品化が進み,2006年3月には納入台数が200台に達する見込みである。撮影と透視の同時対応が可能な同社のFPD装置は,静止画像はもちろんのこと,低被曝でリアルタイムに高精細・高画質な動画像が得られるとして,中国・米国を中心に海外でも高い評価を得ており,輸出も順調に伸びているとした。さらに同社は,高度なシステム機能を用いることで,従来のアナログやI.I.の装置ではできなかった新しいアプリケーションの開発に邁進しているとして,式典後の記念講演会において,注目される新アプリケーションの開発動向を発表した。

 講演会では,最初に柴田幸一氏(同社医用機器事業部技術部,写真3)が,「FPDを用いたアプリケーションの開発動向―FPDイメージングが開く新しい世界」のテーマで講演を行った。同氏は,フィルム-スクリーン系と同等以上の高画質を実現し,撮影と透視の統合を可能とした直接変換方式FPDは,X線の新時代を築く診断機器であるとして,直接変換方式FPDの特性を生かした新しいアプリケーションを紹介した(以下,1)〜5))。

1)コーンビームCT(W.I.P):FPDの歪みのない広いダイナミックレンジを利用することで,IVRにおいて造影剤を注入した組織の同定が非常に容易になるため利用価値が高い。
2)エネルギーサブトラクション(W.I.P):高精細,高画質を生かし,異なるX線のエネルギーを 用いて骨および軟部組織を分離・描出し,2つの画像を画像処理することで病変の視認性を高め,診断能の向上を図る。
3)ダイナミックデュアルエネルギーサブトラクション(W.I.P):さらに,透視(動画像)において,骨および軟部組織の立体構造の把握に用いる。
4)スロットラジオグラフィ(W.I.P):歪みや散乱線の少なさと高画質により,全脊柱,下肢を対象とした長尺撮影(FPDとX線管の対向位置関係はそのままに,下方へ全体的にスライドしながら撮影)。
5)デジタルトモシンセシス:臨床現場で現在,胸部・関節などの多くの部位で適用され高い評価を得ている,1回の断層撮影で任意の再構成裁断面が得られる撮影法。

 続く特別講演では,すでに臨床現場で注目を集めているデジタルトモシンセシスの技術について平野浩志氏(信州大学医学部附属病院放射線部技師長,写真4)が,「フラットパネルディテクタ対応トモシンセシスの有用性―MSCTとの比較」のテーマで講演した。同氏は,1回の断層撮影で任意断面の画像が何枚でも得られるトモシンセシスの利点として,患者のポジショニング維持時間が大幅に短縮し,同一呼吸相の画像を再合成できること,診断に必要な断層像を何回でも再構成が可能で,大幅な被曝低減を図れること,とした。さらにトモシンセシスの技術の進化の歴史とI.I.での限界を紹介し,FPDの開発なしにはトモシンセシスの発展はなかったと述べた。MSCTとの比較では,コントラスト比はMSCTがトモシンセシスよりも高く,特に低コントラスト領域ではMSCTが優位だが,金属との混在部分断層において,金属を中心に強烈なアーチファクトが出現するMSCTに比べ,トモシンセシスでは極端に少ないとした。そして,トモシンセシスは単純X線像との対比が容易で,特に金属を挿入した術後の骨の変化の観察では,CTやMRIよりも優位であるという。また,立位での断層撮影が可能で簡便性に優れており,患者の医療被曝軽減と経済性の観点からも,トモシンセシスは優れているとした。

 今後も,FPD市場をリードする同社の新たな展開に期待したい。


●問い合わせ先
株式会社島津製作所 医用機器事業部
マーケティング部 販売促進課
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