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東京大学医学部附属病院
全国初の災害医療マネジメント部を設置
〜東日本大震災経験を踏まえ,新たな災害医療マネジメントのモデルを確立〜

(2012/3/28)

●問い合わせ先
東京大学医学部附属病院 精神神経科
担当:笠井 清登(かさい きよと)
TEL 03-5800-8919(直通) FAX 03-5800-9162
E-mail:kasaik-tky@umin.net

 

  東京大学医学部附属病院では,平成24年4月1日より,「災害医療マネジメント部」を設置する。同部は,東日本大震災における宮城県エリアでの災害医療支援活動の経験を踏まえ,大規模災害時の救急医療から中長期的な保健・予防活動までを包括的にマネジメントする「災害医療マネジメント学」の確立と,それを担う専門的医療人である「災害保健医療マネージャー」の育成を目的としている。

  設置の目的は,災害発生時の超急性期の医療提供にとどまらない。東日本大震災では,巨大津波により多くの医療機関,自治体が機能を失い,多数の市民が長期の避難所生活を余儀なくされたため,多チーム・多職種協働による身体・こころのケア活動を中長期にわたってマネジメントできるかどうかが,災害医療活動の成否を分けた。「災害医療マネジメント」はこのような教訓から生まれた新しい概念。
  災害医療マネジメント部は,救急,内科・高齢者医療,小児医療,こころのケア,感染症,看護,薬剤,ロジスティクス,ITなどの専門家で構成する。災害医療マネジメントの方法論の確立,国や地域レベルの災害医療のネットワークの構築や維持,多職種の人材育成・研修を行い,今後のいかなる大規模災害にも被災者に医療を有効に届けるモデルとなることを目指す。

  1995年の阪神・淡路大震災,2004年の新潟県中越地震などを教訓として,大規模災害時に外傷患者等の救急医療を担う災害派遣医療チーム(DMAT)など,災害医療体制の整備が進んできていた。しかし,今回の東日本大震災では,巨大津波によって,広範な地域の保健・医療機関が壊滅,地域の保健・医療スタッフ自体が被災,自治体のコーディネート機能が麻痺,という全く想定していなかった事態がおきた。災害医療活動の規模,困難さは災害史上類をみないものとなり,従来の DMATによる超急性期の医療支援モデルだけでは対応しきれなかった。
  この状況で同院は,震災直後から現在に至るまで,のべ150名を超える多職種スタッフ(内科医,外科医,救急医,小児科医,精神科医,看護師,薬剤師,臨床心理士,ケースワーカー,事務職員など)を宮城県石巻,東松島,南三陸(志津川),気仙沼エリア等に派遣して,身体・こころのケアの活動を続けてきた。こうした活動の教訓として,被災地スタッフと連携しながら,医療チーム・地域・国レベルでの円滑な支援活動のコーディネートにより保健医療サービスを市民に届けること,救急医療の初動から慢性身体疾患やこころのケアの保健・予防活動までの長期的視野にもとづいて多職種協働チームで支援を行うこと,急性期には医薬品,医療機具,食料,燃料などの物資調達を含む自己完結型支援が重要であることを認識した。
このような経験を踏まえ,《災害医療マネジメント》という概念を提案し,学問として確立するとともに,専門的医療人を育成する。

1. 設立の目的
災害医療マネジメント部は,東日本大震災における宮城県エリアでの災害医療支援活動の経験を踏まえ,大規模災害時の救急医療から中長期的な保健・予防活動までを包括的にマネジメントする「災害医療マネジメント学」の確立と,それを担う専門的医療人である「災害保健医療マネージャー」の育成を目的としている。

2. 構成
災害医療マネジメント部は,専任の部長,副部長の下に,救急,内科・高齢者医療,小児医療,こころのケア,感染症,看護,薬剤,事務・ロジスティクス,ITなどの領域の専門家(通常の業務と兼任)で構成される。

3. 活動内容
(1)災害医療マネジメントの手法の確立:
災害医療マネジメント部は,東京やそれ以外の地域で大規模災害が発生すると,東京大学本部や病院長の指揮のもと,DMATや急性期以降の医療支援チームを編成し,被災地で災害医療を多職種で提供する。
地域の災害医療の刻一刻とかわるニーズを的確に把握し,チーム・地域・国レベルの活動をコーディネートしながら,急性期の医療の初動から中長期の保健・予防活動までの包括的なマネジメントを行う。
平時から,国や文部科学省,厚生労働省,地方自治体,国立・私立大学病院,日本赤十字病院などと連携し,恒常的な災害医療支援のネットワークをつくり,形骸化しないよう絶えず維持する。災害が発生したらどこが指令を出すのかといった事前のルールづくりと,確認・更新作業を行う。
日本は諸外国に比して大規模地震が頻発する国であり,日本がリーダーシップをとってエビデンスにもとづく災害医療マネジメントを開発し,国際社会に発信することがアジアのリーディングホスピタルとしての使命であると考えられる。
(2)災害保健医療マネージャーの育成
上述の新しい概念にもとづいて災害医療をマネジメントできる「災害保健医療マネージャー」の育成と,人材育成の方法論の確立を担う。医師・看護師のみならず,多職種におけるリーダーシップ研修を行うとともに,全国レベルでのスタッフ研修や学生教育にも貢献する。

●参照URL
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/about/direction/index.html