エドワーズライフサイエンス(株)は,静脈の血液中に含まれている酸素の濃度である酸素飽和度を連続的に測れる「プリセップCVオキシメトリーカテーテル」の7Frタイプ(以下プリセップ7Fr)を10月中旬より発売開始した。
CVカテーテル(中心静脈カテーテル)は,中心静脈に栄養を送ったり,薬剤を投与するためのカテーテルで消化器や脳の手術後などに広く使われているが,プリセップ7Frは,そのCVカテーテルに,酸素飽和度を測定するオキシメトリーセンサーをセットした製品。初めて通常のCVカテーテル同等の7Fr(Fr:フレンチ, 1 Frは1/3mmに相当)という細いカテーテル径を維持しつつ,オキシメトリーセンサーと一体化させた。
使い慣れたCVカテーテルと同じ太さで酸素飽和度を測るセンサーのついた製品を…という,日本の医療現場からの強い要望に応えて開発された新製品である。
酸素飽和度の連続測定は,酸素消費量と供給量のバランスを適切に保つために欠かせない。これまで,心臓血管外科の手術などでは酸素飽和度の測定は欠かせないものとされてきたが,その有用性は循環器領域のみならず,ハイリスクの一般外科手術時やICUの患者やセプシス(敗血症)患者の管理においても,極めて有用であることがわかってきた。
たとえば手術中の細菌感染が起こりやすい腸管の手術などにおいて,酸素飽和度の測定は菌血症や敗血症対策としての適切な輸液管理を行う指標となり,予後の改善に役立つ。また,ヘモグロビンの数値と酸素飽和度のデータを参照することで,ヘモグロビン数値が輸血を必要とする指標を下回っても,酸素飽和度が高ければ見合わせるなど,総合的に判断することが可能となり,不必要な輸血を避けることができる。
今回のプリセップ7Frの発売により,より広い診療科において治療判断に酸素飽和度の測定データを取り入れることで,より適切なエビデンスに基づいた治療方針が立てやすくなり,治療費の削減や死亡率低下などが期待される。
●主な特長
ダブルルーメン+オキシメトリー(酸素飽和度)センサー
ダブルルーメン(混注不可能な薬剤を同時に投与するために二つ内腔のあるカテーテル)にオキシメトリーセンサーが加わったCVカテーテル(中心静脈カテーテル)。
通常の中心静脈カテーテル同様の7フレンチ径
カテーテル径が7Frなので,緊急手術においても通常のCVカテーテル同様の手順で素早く挿入が可能。
エビデンスに基づいた治療による予後改善が可能に
早期目標指向療法(EGDT)といったエビデンスに基づいた治療法に欠かせない酸素飽和度を簡単に連続的に測定でき,予後改善に役立つ。
●早期目標指向療法(EGDT (Early Goal Directed Therapy))とは
アメリカ集中治療医学会(SCCM)では,中心静脈酸素飽和度を連続的に測定することで重症患者の予後を改善する手順を推奨している。この手順は,「早期目標指向療法(EGDT)プロトコル」と呼ばれ,救命救急室(ER)に搬送されてから最初の6時間に行う治療をまとめたものである。具体的には,従来,患者状態の変化に応じて行っていた輸液投与を,初期段階で集中的に行いながら,患者の中心静脈酸素飽和度を70%以上に保つようプリセップカテーテルで連続的に測定する。研究によると,この方法を実行した結果,重症患者のICUでの入院日数が平均3.8日短縮され,院内死亡率も減少したと報告されている。
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